社員の肩書でじわりと盗む 組織に入り込んでいく、中国・経済スパイの実態世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2020年07月30日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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ゆっくりと社内情報を盗んでいった“優秀な社員”

 ここまでさまざまなケースを見てきたが、中国によるスパイ工作が広範囲に行われている事実は、もはや世界でも常識だと言っていい。驚きもない。

 日本でも、今年判明した大手企業へのサイバー攻撃だけでなく、各方面でさまざまな工作が行われているはずだ。ある企業の幹部が少し前に筆者にこんなことを漏らしたことがある。「友人の企業で、新卒で入社してきた社員が数年後に退職した後、社内の情報を盗んでいたことがサーバの記録などから判明した。ゆっくりと情報をコピーしていた。日本の有名大学を卒業した優秀な中国系社員だったらしい」

 もちろん全ての留学生や研究者、従業員がスパイというわけでは決してない。ただ何くわぬ顔をして協力者になっているケースは確かにある。日本企業で働くビジネスパーソンも、そういう実態が現実としてあることを肝に銘じておいた方がいいだろう。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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