小規模な店舗を経営する事業者は、労働人口の減少を背景とした慢性的な人手不足に加えて、新型コロナウイルスの影響も重なり、大きな苦境に立たされている。経産省がさまざまな支援策を打ち出してはいるものの、外出自粛や時短営業の影響から事業の継続を断念するケースも多くみられる。
その一方で、こうした「お店の課題」をテクノロジーの力で解決する動きも加速している。例えば、店舗向け業務・経営支援サービスを展開するリクルートは、これまで煩雑なお店の会計業務の負荷を軽減するPOSレジアプリや、複数の決済手段に対応できるキャッシュレス決済サービス、待ちの不満を解決する受付管理アプリや予約管理をシンプルにする予約管理アプリなどを「Air ビジネスツールズ」として提供してきた。
特にこのコロナ禍において、これらのサービスが金銭授受による接触リスクの低減や“密”の回避といった感染対策にもなり得ることから、Air ビジネスツールズに対する注目度はさらに高まっている。
そして1月、同社は新たに13番目のサービスとして「Airカード」を投入した。狙いは何か。「Airビジネスツールズ」統括プロデューサーの林裕大氏に話を聞いた。
Air ビジネスツールズは、0円でカンタンに使えるPOSレジアプリ「Airレジ」を皮切りに、待ちの不満を解決する受付管理アプリ「Airウェイト」、予約管理をシンプルにする「Airリザーブ」、カード・電子マネー・QR・ポイントも使えるお店の決済サービス「Airペイ」、やりとりも作成もラクになるシフト管理サービス「Airシフト」などで、店舗運営にまつわる事業者の課題を解決してきた。そして、21年1月に登場したのが法人カードである「Airカード」だ。
「これまでさまざまなお店の業務支援を行う中で、多くの中小事業者の方が経費の管理に課題を抱えていることが分かりました。例えば、小規模の店舗では事業を運営するための経費と家計をうまく分離できていないなどの課題を抱えています」と林氏は指摘する。
「例えば、お店の備品が切れたので購入する、といった場合、週や月の終わりにたまったレシートを仕分けして経費精算するわけですが、その時間や労力が事業者の大きな負担になりますし、そもそもきちんと分けて管理できていないケースもあります。こうした課題をどうしたら解決できるのか、その1つの方法として考えたのが法人カードです」
この動きは20年10月の電子帳簿保存法改正によって、領収書の電子データを原本として取り扱えるようになったことも後押ししているという。
「今後、クレジットカードの利用明細データで経費精算が可能になるので、ペーパーレス化の流れはさらに加速するでしょう。法人カードを使えば、どこで何にいくら使ったのかが明細に記入されるので、転記ミスによる計上漏れもなくなりますし、ビジネスとプライベートの利用を分けることができるようになります」
ただ、「経費管理に法人カードが有効である一方、中小事業者の多くの方々にとって、その存在はまだまだ認知が低い」と林氏は話す。同社が行った調査では、約9割の経営者が法人カードを「名前は知っている程度」「知らない」と回答。認知が低い実態が浮かび上がった。
「それがAirカードを開発した理由の1つです。認知率が低いものの、法人カードが経費管理の課題を解決できるのならば、それを私達が届けるべきだと考えました」
店舗経営者が思い描く“理想のお店”を作るために、テクノロジーでどんな支援ができるのか――それがAir ビジネスツールズの原点であり、ミッションだと林氏は語る。
「これまで私たちは『お店に寄り添いながら困りごと、悩みごとをテクノロジーで解決する』ことを使命として経営支援を行ってきました。例えば、あるお店ではレジ締め等、必要だけれども大変なたくさんの業務に追われていました。それゆえ、新メニューの開発など本来やりたかったことに時間を使えない、などの声をよく聞きます。そこでPOSレジアプリを開発し、今までレジ締めに使っていた時間を短縮し、お店の方にとって“本来やりたかったことに使える時間”が増えたら良いなと思いました」
「また、キャッシュレス決済が普及する中、決済手段もどんどん増えています。新しい手段が増えるたびに対応する手間が生まれてしまう一方、対応しないと機会損失が生まれる可能性があります。そこで35種類のキャッシュレス決済手段に1つで対応できる『Airペイ』をリリースしました。ほかにも、もともとは受付管理や予約管理をカンタンに導入できるサービスであった『Airウェイト』や『Airリザーブ』は、コロナ禍では“3密”対策のために役立つツールとして数多くの問い合わせを頂いています」
「こうしたこれまでのAir ビジネスツールズの各サービスと同様に、Airカードもお店の日々のアナログな業務にかかる、手間、時間、コストを軽減することを目指しています。例えば、経費の支払いをAirカードに一元化することで、精算業務にかかる時間を削減できますし、さらに振込手数料の削減やポイント還元など多くのメリットがあります。テクノロジー活用やデジタル化という話は、DX(デジタルトランスフォーメーション)というと難しく聞こえるかもしれませんが、私たちが目指しているのは一部の先進企業のためのものではなく、日本の事業者全てが簡単に利用できるサービスです。もともとAir ビジネスツールズの“Air”には、『お店の毎日の業務に空気のように溶け込む』『ITの知識に左右されず、存在を意識しないほどスムーズに使える』という意味もあります。こうした想いを込めた次のサービスとして用意したAirカードが中小事業者の悩みを解決する一助になれば幸いです」
なお、Airカードは「法人カードとして業界No.1」(※)を実現した1.5%のポイント還元率も大きな特長だ。リクルートとJCBは以前から消費者向けカードで協業しているが、今回、店舗運営における経費管理の煩わしさを軽減したいと考えるリクルートと、法人カードをもっと普及させたいと考えるJCBの思いが一致し、19年末から話し合いを重ねて業界最高水準の還元率を打ち出したという。
林氏は「Air ビジネスツールズとして法人カードを出すのであれば、店舗運営者の方々に実際にご利用いただいて、メリットを感じてもらえるものにしなくてはなりません。そのため、JCBさんのご協力のもと、一般的なカードの還元率よりも高い1.5%に設定しています。まだまだ認知率が低い法人カードですが、これをきっかけに興味・関心を持っていただきたいです。この部分は自信をもってアピールできるポイントですね」と語る。
社会環境や人々の行動様式が変わる中で、Air ビジネスツールズの複数のサービスを併用する事業者が増えており、「Airカード」も既存のAir ビジネスツールズ利用者の間で導入が進み、当初の予想よりも速いペースで普及しているそうだ。
林氏は「自分らしいお店を経営したいと考える中小事業者を支えるのが私たちのミッション」と語るが、お店のリアルな課題感を反映した数々の便利なサービスはどうやって生まれているのか。
「お店が実際はどんなことで困っているのか、何が求められているのかを把握することに努めています。製品企画・開発・UI/UXを担当するデザイナーまで職種を問わず、提携店舗で定期的に業務体験させてもらったり、利用ユーザーからの問い合わせや改善要望に目を通したりして課題の種を発見しています。その後、見つけた課題を元に試作品を作り、実際の店舗に使ってもらい、意見をもらうことで改善を重ねています。実際の業務を肌感覚を持って知り、外部の人間としての目で観察することで、業界では当たり前の慣習を改善する気付きにもなります。現在リリースしている多くの機能はそうして開発したものです」
1つのサービスを机上の想像で作るのではなく、身をもって体験した気付きを反映しているからこそ、Air ビジネスツールズは多くの事業者に支持されているのかもしれない。
「当然、開発に時間もコストもかかりますが、企画の段階で深く課題を知り、最終的にたくさん利用してもらえるものを作るためには必要なプロセスだと考えています。特に小さなお店は、毎日やらなきゃいけない業務が山積していて、オーナーさんが眠るひまもないほど忙しいことも珍しくありません。だからこそ、Air ビジネスツールズのおかげで『本当にやりたかったことに使える時間ができた』と言ってもらえるとすごくうれしいですね」
コロナ禍によって苦境に立たされた店舗運営者が多いときだからこそ「テクノロジーが果たせる役割は大きい」と林氏は語る。
「普段から人手不足なのに、新型コロナの予防対策でさらにリソースを割かれて困っているお店は多いと思います。逆にAir ビジネスツールズを利用している方からは、『現金授受がない非接触決済に対応していることがお客さまの安心感につながっている』『予約管理アプリのおかげでお客さまの不便を減らすことができた』といった声ももらっており、テクノロジーによる業務支援の大切さを日々感じています。もちろん、お店が抱えている悩みはまだまだありますし、解決へのアイデアもたくさんあります。これからもAir ビジネスツールズでさまざまな課題を解決し、中小事業者に寄り添いながら、理想のお店づくりのお手伝いをしていきたいと思います」
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2021年5月11日