老舗大企業の働き方改革を推進する女性リーダーに聞く ワークシフトの鍵はどこに?

» 2022年07月13日 10時00分 公開
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 ビジネス環境の変化に即応できる強靱な組織を目指して、多くの企業がワークスタイル変革を加速させている。それは保守的なイメージのある老舗の日本企業でも同様だ。「働き方」の意識が変化する一方、新しいことを社員に受け入れてもらうのは言うほど簡単ではない。そのような中、老舗大企業にとってはどういった取り組みが効果的なのか。

 成功事例として参考になるのが、日本の製造業を支えてきた電気機器メーカーである明電舎と国内素材メーカーとして伝統を持つ日立金属だ。どちらも長い歴史があり重厚長大なイメージもある企業だ。その歴史も規模もある老舗企業のワークスタイル変革に女性リーダーが大きく関わっているという。

 そこで、働き方改革推進の中核を担う明電舎DX推進本部デジタル化推進部IT企画課の福地智子氏、日立金属情報システム本部企画部デジタル戦略グループの大越久仁江主任の対談を実施した。業務改善につながる ITツール活用のポイントや、これからの時代に求められる柔軟な働き方を実現することのベネフィットはどこにあるのだろうか。

具体的な目標や期限で働き方改革を推進

 明電舎は電力や水インフラシステム、産業システム機器などを手掛け重電5社の一角である1897年創業の電気機器メーカーだ。日立金属は、1910年に前身企業が設立され、金属材料、機能部材事業を主とする世界トップクラスの高機能材料メーカーだ。どちらも100年以上の歴史を持つ老舗でもあり、グループ企業含めグローバルに展開する、国内を代表する大企業である。

 日立金属の大越主任は、工場での生産管理システムのシステムエンジニア職を経て、3年前に本社に赴任。2019年に働き方改革の一環として社内で始まった「間接業務改革プロジェクト」に参画し、業務の合理化や労働時間の削減に取り組んでいる。一方、明電舎の福地氏は、入社以降情シス部門に在籍し、業務効率化ツールの導入などを通して働き方改革を推進している。

―― 両社のワークシフト、ワークスタイル変革に関する取り組みについて教えてください。

大越氏 日立金属の間接業務プロジェクトは、2018年に総労働時間の短縮と業務合理化を目指して始まりました。18年にはコンテンツクラウドのBoxを導入し、19年より利用が本格化しています。

日立金属情報システム本部企画部デジタル戦略グループ主任の大越久仁江氏

福地氏 明電舎も17年に働き方改革を推進する組織ができ、私は2年間部署を兼務して取り組んでいました。最初は人事から残業や未取得の有給休暇を減らすミッションを与えられましたが、最近ではコロナ禍対策の意味合いもあります。大越さんのおっしゃる間接業務プロジェクトはどんなふうに進めていますか。

明電舎DX推進本部デジタル化推進部IT企画課の福地智子氏

大越氏 最初はツール先行でペーパーレスを進め、紙回覧をやめるようワークフローを導入しました。ただ、現場の利用を促進する情報発信だけでは浸透しない部分が出てきました。どこの企業もよくある話だと思うのですが、現場の中間管理職は忙しいので、説明会を実施しても出席できないことが多く、いざ導入となると『聞いていない』と。そこで、経営層からのトップダウンと現場のボトムアップの両輪で移行を促すようにアプローチを変更しました。例えば、経営層へご理解をいただき、管理職向けに説明する機会を設けました。特に効果的だったのは、事業所単位でのワークフローの活用実績を見える化することです。毎月の報告で活用率の低い拠点が明らかになるので、「どうしてうちは利用が進んでいないのか?」といった事業所間の競争意識が高まりました。

福地氏 私たちもツール先行型でBoxを導入したので、このあたりの悩みは共通ですね。工場に出向いて説明会を実施するなどしましたが、なかなか大きな成果にはつながりませんでした。そこで、既存のファイルサーバからの移行期限を明確に設定しました。期限を決めることで導入の起爆剤とし、それをきっかけに、真剣に話を聞いてもらえるようになりました。

大越氏 福地さんがおっしゃるように、具体的な期限や目標を定めるのはとても重要だと思います。日立金属では19年に総労働時間の短縮や合理化による金額目標を決めていました。『生産性の高いやり方』という「ふわっとした」表現で変化を生むのは難しい。だからこそ、具体的なツールの活用率を出したり、実績を算出して効果を見えるようにしています。年間の労働時間を2000時間と先に設定し、年休取得率も決めました。『無駄な仕事を減らすために働き方を変えていこう』という「意図と数的目標」を持ったアプローチをしました。そこにやりがいを加え、自己実現などのベクトルも考慮しながら進めて今の形になっています。明電舎さんの描くゴールはどういったものですか。

福地氏 働き方改革を推進する上で目指した大きなゴールは、コロナ禍対策もあって『いつでも、どこでも、どのデバイスでも』仕事ができる環境づくりです。コロナ禍で出社日数の制限が入っても、Boxで外部から必要な情報に安全にアクセスし、仕事ができるよう整備を進めました。

コロナ禍で一気に進んだデジタルシフト

―― 働き方改革を進める上でBoxが中心的な役割を果たしているのですね。とはいえ、両社のような歴史のある大企業では、従来のやり方や社内に根付いた慣習を変えていくのはなかなか難しい印象もあります。きっかけはなんだったのでしょうか。

大越氏 ファイルサーバの代替として2018年からBoxを使い始めていましたが、確かに最初は思うように定着は進みませんでした。そこで、本社はいつまでに、その後、各工場はいつまでに、と具体的な期限を決めて切り替えを促し、その結果、19年度にはファイルサーバからBoxへの移行がかなり進んだ状態となりました。20年の新型コロナ感染拡大は、テレワーク環境を構築しようとしていた矢先の出来事だったので、この流れに大きな弾みをつけた形です。

福地氏 私たちもテレワーク環境の構築を準備していたところに新型コロナの感染が広がったので、一気に環境整備が進んだ印象はありますね。

大越氏 確かにそうですね。ペーパーレスなんて、コロナ以前は誰も見向きもしていませんでした。当時は当たり前ですが、出社しないと複合機が使えない状況だったので、FaxとBoxを連携させ、オフィスに行かなくてもFaxを受信箱で見られるようにし、スキャンした紙書類のデータも直接Boxに格納するようにしてペーパーレスとワークスタイル変革を進めました。そのおかげで、オフィスを移転する際は31台あった複合機を6台にまで減らすことができています。まさにBoxの導入がデジタル化の最初の一歩、原動力になった感じですね。明電舎さんでは紙の書類の扱いはどうですか?

複合機の数を8割削減した日立金属本社
22年の本社移転に伴い、オフィスも働き方改革を反映したレイアウトにアップデートしている

福地氏 ペーパーレスについては取り組みは進んでいるのですが、まだ道半ばといったところです。というのは、息の長い製品が多く、数十年前の設計書データなどを含めると膨大な数の書類が蓄積されています。工場にはまだ紙で保管されている書類もあります。こうした紙とデジタルデータの混在によって、情報を探すのに時間がかかるのが大きな課題となっていて、その改善に取り組んでいるところです。ただ、数十年分のデータを一気に全てデジタル化するわけには業務上もいかないので、まずは新しいデータをデジタル化して保存する方針で進め、22年度から全てスキャンしてデータ化し、今後はそもそも紙を生み出さないペーパーレス運用にしていく計画です。

―― Boxと他の業務アプリケーションとの連携ではどのように活用されていますか?

大越氏 当社では紙を介在する業務を合理化するためにワークフローを作っています。すでに開発は終わっていたのですが、本格的に使い始めたのはコロナ禍に入ってからですね。Boxにデータを保管し、ワークフローで回覧すれば紙はいりません。この取り組みをきっかけにBoxが社内により浸透し始め、Boxの共有リンク発行数は前年比で倍増し、21年度にはさらに増加しています。また、労働時間の削減を目指して、RPAツールとBoxの連携も行っています。

福地氏 うちもBoxとシステムの連携が進んでいて、RPAとの連携も検討しています。RPAは具体的にどのように使っているのでしょうか?

大越氏 現在、130前後のRPAが稼働していますが、Boxは各プロセスのファイル格納ハブとして動いています。システムとシステムの隙間を埋めるハブとしての機能をBoxに期待していて、Boxは単なるクラウドストレージではなく、システムのハブとなるプラットフォームのような捉え方をしています。

ツール定着の鍵は現場のインフルエンサー

―― 導入したツールを浸透させ、企業の文化そのものを変えていくには、現場とのコミュニケーションが欠かせないと思います。両社ではどのようにアプローチしていますか。

福地氏 Boxの啓発活動の1つとして、周知のための専用サイトを作りました。ここには活用事例を月に2回程度アップしていて、使い方に迷ったときはこのサイトを見るように伝えています。これに加えて、全国の工場や営業拠点を行脚する草の根運動もしています。コロナ前は年2回は出張していました。これは上司の『現場の声をきちんと聞く』という考えがあったからです。全国の現場に足を運ぶのは大変ですが、オンラインでは言いづらいちょっとしたことでも率直な意見を聞ける大事な機会だと思っています。

大越氏 私たちはローリング作戦で推進しました。毎月定例会を実施し、実績を公開して、Boxの活用に寄与した人にはノベルティグッズを配布するといったこともしています。

福地氏 インセンティブがあるんですね。

大越氏 Boxのトレーナーやボトルをプレゼントすることで、ちょっとした楽しみをプラスしています。プレゼントをもらった人はユーザーの巻き込み力が強く、その人が現場のインフルエンサーとなれば、ユーザー側から風を吹かせられます。現場でなければ現場の改善は難しい部分もありますので、心強い存在です。

福地氏 私も現場のIT担当者の疑問を払拭することが、ツール導入においては一番大事だと考えています。導入を渋っていた現場の担当者に理由を聞くと、ささいな疑問や不明点があるだけだったりするのです。そこを解決すれば円滑に導入が進むことも分かりました。現場のIT担当者が理解してくれれば、その人が現場にも広げてくれます。

大越氏 現場の協力もあって、日立グループの中でも当社はテレワークをスムーズに導入できたと思います。工場へ出張する際もBoxがあればいつでもどこでも安全にデータにアクセスできます。以前はメールや紙の書類でやりとりしていた社外との協業でも、Boxのおかげで共有が楽になりました。

福地氏 明電舎も以前はメール文化が根強く、メール添付による外部の方とのファイル授受はどうしても誤送信のリスクが付いて回るものでした。別のファイルシステムで運用していた当時は、社外の方にもシステム登録していただき、送信設定などが必要でしたが、Boxに移行してからは安全な共有リンクを送るだけになりました。社外とのコラボレーションが格段に楽になったのもワークスタイル変革の1つだと感じます。

魚をあげるのではなく魚の釣り方を教える

―― 日本の製造業を支える大企業で働き方改革を進めてきたお二人ですが、「変革を生むためのポイント」を教えてください。

大越氏 働き方改革を主導する上で最も重要なのは、当事者目線と経営者目線の両方を持ち、中立の立場で双方の視点から考えることだと思っています。仕事のやりがいを保ちながら合理化していけば、合理化がやりがいにつながります。

福地氏 私が一番重要だと考えるのは、モチベーションの向上です。人間は感情の生き物であり、やる気にならなければ何事も進みません。現在はデジタル化の推進がミッションなので、将来的にはどんどんメールを減らしていきたいと思っています。今は社内のポータルサイトにデータをアップしても、その件を上長にメールしていたりして、二重の連絡が発生しています。すぐにPCに触れない業務の人もいますが、そうでなければメールでの連絡は不要なはず。冗長な伝言ゲームをやめるためにも、22年度からはメールの送受信数のデータを取り、成果を見える化しています。

大越氏 当社ではメールでの回覧をワークフローで減らしていますが、ユーザーがポータルサイトを見てくれないのが悩みです。福地さんはどうしていますか?

福地氏 社員から質問されたときは、『ポータルのここを見てください』と発信場所を伝えています。仮にすぐにその場で答えられることだったとしても、ポータルを見ることが習慣化するように心掛けていますね。

働き方改革推進の鍵はBox活用にあり

―― これまでの取り組みを通じて、社内の働き方はどう変わりましたか?

福地氏 以前は勤務時間が午前8時から午後5時で固定されていましたが、働き方改革をきっかけにどんどんフレックス活用が進んでいます。そのおかげで、以前に比べて働き方が自由になりました。

大越氏 働き方改革が進んだことで、ベネフィットはいくつも生まれています。以前は通勤に2時間かかる人がいて、子どもの送迎が大変だったけれど、通勤時間がなくなり生活に余裕ができたという声も聞いています。介護している人も、毎回休みを取らずに自宅で働きながら介護と仕事を両立できるようになりました。育児や介護といった社員一人一人のライフスタイルの変化を受け止め、やりがいを持って働ける環境になること。まさに福地さんの言葉通り「働き方が自由になった」と感じています。

福地氏 ビジネス環境の変化が激しい時代においては、保守的で安定した業種・業態でも次世代の働き方へのシフトは必須だと考えています。今後さらに労働人口が減少し、人手不足に拍車が掛かると予想される中で、働き方改革を推進し「選ばれる会社」になるためにも、Boxに代表されるクラウド活用の重要性がますます高まってくると思います。

―― ありがとうございました。

 女性活躍が叫ばれるなか、長い伝統を持つ老舗大企業で「変革」を推進する福地氏と大越氏。二人の女性リーダー対談を通じて強く印象に残ったのは、経営視点での数的目標を軸にした合理的なプロセスと、業務を担う現場にきちんと向き合いながら従業員一人一人の働き方に寄り添う細やかな姿勢の両立だ。“重厚長大”なイメージのある業界においても、ワークスタイル変革の波が来ていることを実感する。明電舎と日立金属の取り組みは、大企業で働き方のデジタルシフトを推進する担当者の大きなヒントになるはずだ。

対談者プロフィール

大越久仁江氏:1989年に当時の日立電線株式会社へ入社後、2019年3月まで、一貫して生産管理システムに従事。2019年4月に、現在の部署である本社システム部門へ異動し、”間接業務改革プロジェクト”に参画、要件整理やPR活動を通し、業務合理化活動を推進している。


福地智子氏:明電舎入社以来、情シス部門に在籍し、ファイルサーバ、Active Directoryの運用管理、またMicrosoft 365等の業務効率化ツールの導入を行ってきた。Boxは導入検討時からプロジェクトに携わり、現在はBoxの活用促進を行っている。


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