「改正リース会計基準」が2026年度にも強制適用!? 円滑な制度対応のために今から準備すべきことはIFRS16先行事例にみるインパクトの大きさ

企業会計基準委員会(ASBJ)による「改正リース会計基準」の策定が大詰めを迎えつつある。借り手リース契約の全てを原則、貸借対照表に資産計上するこの改正は、多くの日本企業に多大な影響を与える。強制適用に備え、どう準備を進めるべきなのか。

» 2023年01月13日 10時10分 公開
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改正リース会計基準の強制適用まであとわずか

 「日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)が、借り手リース契約を貸借対照表に資産計上する会計基準の開発で合意」との報道が流れたのは2019年3月のこと。

 それから約3年半。20年2月には、国際財務報告基準「IFRS(International Financial Reporting Standards、イファース)」の最新基準「IFRS16号(IFRS16)」の単一モデルを基礎として、リース会計基準の改正を進める基本方針が示された。21年3月には公開草案に向けた審議を進めている旨の公表がされ、ASBJによる「改正リース会計基準」の策定はいよいよ大詰めを迎えつつある。

会計 プロシップ 巽俊介氏(取締役 システム営業本部 本部長 制度変更対応室 室長)

 「この間、ASBJでは6つの論点を中心に審議が進みました。22年11月に発表された公開草案目次案を確認すると、全体の8〜9割は審議を終え、残る『範囲』『リースの識別』『開示』『適用時期』についても、議論が進んでいます。こうした状況から近い将来、改正リース会計基準の強制適用が開始されることに疑念を挟む余地はありません」と、プロシップの巽俊介氏(取締役 システム営業本部 本部長 制度変更対応室 室長)は解説する。

経理と現場で生じる多大な手間が対応のネックに

 改正リース会計基準が経理/会計業務に与えるインパクトは業種によっては甚大だ。国内では従来、業務で広く利用されている自動車やオフィス家具のオペレーティングリース、さらにテナントなどの賃貸契約に関して、借り手側の資産計上を必要としてこなかった。この状況が根本から覆されるのだ。

 そのために生じる業務は多岐にわたり、対応は一筋縄ではいかない。巽氏によると、19年1月より適用となり、今回の改正のモデルになっているIFRS16適用時では「年度決算」「月次業務」「日次業務」「予算策定業務」のそれぞれで、次のような作業が企業に求められたという。

 まず年度決算では、IFRS16適用に伴う情報の適切な開示に向けた「開示資料作成」と、使用権資産としてオンバランス化したリースの「減損兆候判定」などの業務が新たに発生した。そこで構築を迫られたのが、開示に必要な広範な情報収集と、使用権資産の減損を適切にシミュレーションする2つの仕組みだ。

 月次業務では、仕訳数の急増とリース契約の条件変更時の対応作業のため、仕訳パターンの追加や条件変更時のリース債務の再測定などが新たに必要となる。残る日次業務と予算策定業務では、従来のオペレーティングリースを資産登録するための業務プロセス/システムの構築と、業績指標などへの影響を勘案した上での投資予算の対象範囲の見直しが求められる。

 「リース契約の把握や資産計上のためには、本社経理と現場双方の業務の見直しが欠かせません。また、仕訳を含め、実務的な作業量も大幅に増加するため、現場の負担を軽減するためのシステム改修も不可欠です。やるべきことの多さから難度は高く、円滑な制度対応に向けできる限り早期に作業に着手すべきです」(巽氏)

現実味を帯びる26年4月からの強制適用

 では、強制適用はいつになるのか。ASBJは「基準公開から強制適用までの期間は2年程度を基礎とする」と提案する一方、具体的なスケジュールまでは未提示だ。

 その中で巽氏が強制適用の開始時期と予想するのは、多くの日本企業が新年度を迎える26年4月以降に開始する事業年度からだ。根拠は、仮に公開草案が23年3月までに公表されると、基準書公表はそこから半年から1年度と想定した場合24年3月までとなり、そこから準備期間を2年とするからだ。

会計 図1 巽氏は、26年4月が強制適用の開始時期と予想する(出所:プロシップ)

 「ASBJは『リース』に先立つ『資産除去債務』のコンバージェンスでも、同様のスケジュール感で新基準書を発表しています。また、基準公表から強制適用までの期間が長引くほど国際的な実務と整合しない状況が続き、ASBJが準備期間を2年と提案しているのも、その点も踏まえてのことです」(巽氏)

 巽氏の予想に従えば、残された期間はすでに4年を切っている。プロシップでは改正リース会計基準への対応支援に向けた定期セミナーをいち早く開催。新基準の全体像が見え始めたこともあり、参加企業は右肩上がりに増えていると巽氏は話す。「今後はあらゆる企業で改正リース会計基準への対応に向けた作業が本格化するはずです。そこで押さえてもらいたいのが、効率的に進めるうえで、外せないポイントがいくつかあることです」(巽氏)

オンバランス化の除外規定はあるものの……

 まずは、改正リース会計基準の適用においては、ASBJがIFRS16と同様の経過措置と整合性が取れるよう検討を進めている点だ。

 経過措置では「完全遡及アプローチ」「修正遡及アプローチ」のいずれかの選択が可能だ。前者は、従来よりIFRSに適用していたように会計処理を行う方法。すでに存在する全てのリース契約について、過去にさかのぼって適用処理したうえで、修正再表示を行う。

 対して後者は、報告年度の期首からIFRS16の会計処理を適用する方法で、過去にさかのぼる必要はなく、修正再表示は求められない。当然、修正遡及アプローチの方が作業量を大幅に抑えられる。「これから新たにリース契約を結ぶ際は、基準の適用を念頭に契約期間を短期に設定するなど、影響を小さくするためにすでに動き出している企業も出ています」(巽氏)

会計 図2 経過措置では「完全遡及アプローチ」「修正遡及アプローチ」のいずれかが選択可能(出所:プロシップ)

 改正リース会計基準の開発論点の一つである「重要性の定め」に対する理解も大切になる。現行の基準では、借り手の重要性が乏しい場合の取り扱いを、次の3つの通り定めている。

(1)期末時点の固定資産残高に対する未経過リースの期末残高が10%未満の場合は、利息込み(利息計算不要)による会計処理。

(2)総額が300万円以下のリース取引における、通常の賃貸借処理による会計処理。

(3)リース期間が1年以内の取引での、通常の賃貸借処理による会計処理。

 「結論からいえば、これら3つの取り扱いは改正リース基準でも引き継がれる見込みです。つまり、300万円以下の少額リースや1年未満の短期リースについては、オンバランス化が不要ということです」(巽氏)

 問題は(1)だ。すでに述べた通り、改正リース基準ではテナントなどの賃貸契約もリースとみなされる。その支払総額の大きさから、従来と比べ未経過リースの期末残高が10%以上となり、利息相当額の合理的な金額の算出が多くの企業に求められると考えられる。

 「現状、大半の企業が利息計算を行っていません。それが新たに必要となれば、契約ごとの個別計算の手間も相まって、現場の負担は一気に高まります。あわせて賃貸借契約などもオンバランスになることから、とりわけ物流や流通、飲食など、多店舗/拠点を展開する業界では、その点を踏まえて準備を進めなければなりません」(巽氏)

IFRS16で蓄積したノウハウを武器に対応を包括支援

 改正リース基準が企業の財務諸表に大きな影響を及ぼすことは、IFRS適用企業を見ても明らかだ。とある飲食グループの持ち株会社では、IFRS16適用前後で総資産が約2倍近く膨れたケースもあり、その影響の大きさが垣間見える。

 「一般にリースのオンバランス化の結果、営業キャッシュフローの計算に含まれていた支払家賃が除外されることで、営業キャッシュフローは高まります。また、支払利息も営業外費用となることで営業利益も高まります。このように、改正リース契約が経営指標に与える影響額の算出も、経営判断の支援に向け経理/会計部門の新たな課題となります」(巽氏)

 こうした一連の作業において、プロシップは。IFRS16対応の資産管理ソリューション「ProPlus」を武器に、約100社にのぼるIFRS適用企業を先進的に支援してきた。

 そのノウハウを基にプロシップは財務インパクトの影響額度導き出す「影響額試算ソリューション」のリリースも予定している。契約書に記載のある必要最低限の項目を登録することで、ProPlusと同様、将来のバランスシートなどへの影響を可視化できる。

 「経営層は改正リース基準の財務諸表への影響に関心を持っています。ROEや営業利益に与えるインパクトを早期に試算することは、経理/会計部門における事前準備の重要タスクになります」(巽氏)

 また、新制度への対応を厄介にする原因の一つ、情報の乏しさを補うためプロシップは改正リース基準についての特設Webサイトを開設している。基準開発の最新動向や現行基準との違いについて広く発信を続けている。

 改正リース基準案の公表が迫る中、リース資産に関する豊富かつ幅広い知見を備えたプロシップの存在感は今後、さらに増すことになりそうだ。

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