ファミマのコンビニエンスウェアがユニクロ並みの安さを実現できる背景には、親会社である伊藤忠商事の存在がある。伊藤忠の祖業は繊維事業であり「繊維カンパニー」は8つあるセグメントの一角をなし、国内外に衣類の生産網を有する。
同社は広報誌で、既にあるリソースを使ってコンビニエンスウェアを展開する趣旨の主張をしていることから、安さの背景には伊藤忠商事のバックアップがあると見て良いだろう。他のコンビニチェーンが服を出したとしても、価格競争力でファミマに負けてしまう可能性は高いかもしれない。
市場全体に目を向けると国内のコンビニ業界は既に頭打ち感があり、今後は人口減少の影響で規模が縮小すると見られる。ファミマの国内店舗数も約1万6500店舗で推移しており、爆発的に伸びる余地はなさそうだ。
飽和した市場で1店舗当たりの売上高を少しでも伸ばすべく、コンビニ業界は新しい定番商品を模索し続けてきた。10年代に普及したコンビニコーヒーはヒット作の一つといえる。一方、15年頃に現れたドーナツは失敗に終わり、昔からあったおでんはコロナ禍での感染対策や人手不足で見かけることが減った。
ファミマがコンビニエンスウェアを強化するのは、こうした新たな定番商品を模索する活動の一環とみられる。弁当やパンなどの日配食品は既に研究しつくされており、加工食品は既に各社がプライベートブランド商品を取りそろえている。店員の手間がかかるホットスナック類で勝負するのは非現実的だ。
こうした状況下でファミマは非食品の衣類に商機を見出したのではないだろうか。現状、コンビニとアパレルという組み合わせの可能性は未知数だ。だがコンビニエンスウェアがヒットすれば他社も必ず導入するだろう。コンビニで気軽に服を買える時代が来るかもしれない。
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
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