繰り返しますが、国が法制化に動き出し、すでに企業や自治体が動いているので、カスハラに対し今以上の強制力が働くことは間違いないでしょう。
しかし、「我が社の従業員」を守るにはこれだけじゃ物足りません。
カスハラの境界線が曖昧で、グレーゾーンが多いからこそ、現場が「ノー!」と言えば、それを最大限に尊重し会社は断固「ノー!」と言い続ける。
それと同時に、毎回「ノー!」と毅然とした態度を取ること自体、現場のストレスになるので、グレーゾーンを「白」にする対策もきちんと行わない限り、「我が社の従業員」を守ることなどできないと思うのです。
そのために不可欠なのは、コミュニケーションに尽きます。
識者の中には「カスハラは店員側の対応にも問題がある、というレベルを超えている」とする意見もありますが、カスハラをコミュニケーションの問題と捉え、客の言動をエスカレートさせない視点も必要です。
全てのグレーゾーンを解消できなくても、カスハラは「人と人の関わり合いの中で起こる悪態」の一つです。
職員と市民、働く人と消費者、サービスする人とサービスを受ける人、クレーム対応をする人とクレームを言う人、といったお客とのコミュニケーションに加え、職場のメンバー同士の良好なコミュニケーションもカギを握ります。
具体的には、現場の人は「自分では対応は難しい」と感じたら、職場の人のサポートを頼めたり、管理職などに即座に連絡できたりする仕組みや制度も万全にする必要があります。
そして、顧客側としてお店や施設を利用する際は、見て見ぬふりをしないで、他のスタッフに「ちょっとあそこで……」と声をかける勇気を持ってほしいです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。
2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。
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