格付けを導入したもう一つの理由は、ワークマンの業界内におけるポジショニングの変化です。
ワークマンはこれまで「機能性×低価格」を武器に、作業服の専門店から、機能性ウエアの専門店としての地位を確立してきました。しかし「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」や「Workman Colors」などの新業態により、徐々に大人カジュアル、アウトドアカジュアル、デザインを重視したアイテムが増えてきました。もともとは図表内で左下のポジショニングだったのが、今ではユニクロを筆頭に、国内SPAブランドと競合する場面も見られるようになっています。
一方、ユニクロはヒートテックやエアリズムなどの機能性商品を続々と開発しており、機能性では世界中で高い評価を得るブランドになっています。つまり、両社は別々のポジションにいたはずですが、同じような市場で競合し合う関係になり始めています。そこでワークマンはあらためて自社の一番の強みである機能性に特化することで差別化しようと、機能格付けを始めたのでしょう。
ワークマンでは今後、格付けを日本の同業者へ普及させて世界標準にし、世界へ店舗網を拡大していくためのデファクトスタンダードにしようともくろんでいます。その上で、機能に特化したアパレル小売りチェーンとして拡大していく想定です。今秋冬の目玉商品である「XShelter 断熱」シリーズは、オンラインストア限定で予約販売したところ4日間で2万点を販売し、早くも売り切れて予約販売を終了しています。格付けは、秋冬のアウター商戦を乗り切り、同社の描く世界進出につながる取り組みとなるでしょうか。新しい動きに注目したいと思います。
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。
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