創造性×ITで生まれた博報堂DYグループ「デジタルワークスペース」 構築をリードした情シスに聞く舞台裏

» 2024年10月08日 10時00分 公開
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 デジタルシフトが急速に進む昨今、特にその重要性が高く、かつ変化が速いのが広告業界だ。クラウドやAIなど日々進化するテクノロジーの動向に常に高いアンテナを張り、広告の勝ち筋を検討したり、消費者ニーズを分析してクライアントの要望に応えたりするためにもデジタル対応は一丁目一番地と言える。

 その中で、日本有数の広告会社である博報堂DYグループに属し、マーケティングとテクノロジーを掛け合わせた価値創造を担うのが博報堂テクノロジーズだ。同社は、デジタル活用を推進するためグループ全体の従業員がいつでもどこでも安心して働けるIT環境「デジタルワークスペース」の整備を進めている。

 昨今、デジタルワークスペースの取り組みはさほど珍しいものではなくなった。しかし取材をしてみると、マーケティング(広告)業界をけん引する同社ならではの視点――“好奇心”や“クリエイティビティ”創出への飽くなき探求が見えてきた。

「攻め」「守り」の両輪で 博報堂DYグループのデジタルワークスペース

 博報堂テクノロジーズは、グループ内に点在していたエンジニアを集める形で2022年4月に生まれた企業だ。開発体制を一元化するとともに、テクノロジーを通して社会と生活者に新たな価値や体験を提供することを目指している。

 デジタルワークスペースプロジェクトを推進しているのが、同社の情報システム部門に該当する「グループ情報システムセンター」だ。プロジェクトは2021年にグループを横断した取り組みとして始動した。

photo 長谷川慧氏(博報堂テクノロジーズ グループ情報システムセンター システム2部)

 デジタルワークスペースの構築は2つのテーマに沿って進められた。一つが生成AIの活用を通した従来業務のアップデートという「攻め」の環境整備。もう一つがゼロトラストセキュリティを軸とした「守り」の環境整備だ。

 生成AIの活用促進を担当する長谷川慧氏は、「どの業界よりもトレンドやテクノロジーに敏感でなくてはならない広告会社グループとして生成AIは避けて通れないものであり、デジタルワークスペースに関係なく活用促進に取り組むべきだと考えていました」と振り返る。

 グループ情報システムセンターが重視したのは、「まずは従業員が生成AIを利用できる環境を用意する」というスピード感だ。2023年5月には、ChatGPTの最新モデルの利用環境として「HDY ChatGPTプレイグラウンド」をリリースした。立ち上げに携わった芹澤佑輔氏は、機能のポイントについてこう話す。

 「ChatGPTの最新モデルをいち早く従業員に使ってもらうために構築しました。生成AIを活用する上でよくある課題は、『社内の重要データがAIの学習に使われて外部流出につながるのではないか』ということです。構築の際は、こういった利用者の不安を払拭することを念頭に置き、機密情報をセキュアに利用できる基盤づくりを意識しました」

 並行して、生成AIを社内のヘルプデスクに利用する目的でRAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用したチャットbotにも着手した。まず情報システムに関するFAQ、ルールやマニュアルのデータを組み込んで開発をスタート。同時に、人事や総務部門を巻き込みながら対象データと利用範囲を広げ、2024年2月に博報堂、博報堂DYメディアパートナーズの全社にリリースしたという。

グループのDNA「生活者発想」 使い手視点に立つことで生まれるクリエイティビティ

 リリースしたツールの利用状況や利用者のニーズを把握して改善したり、さらなる活用を促したりする取り組みも行った。生成AIに対する現場の興味や期待は高かったが、実際に使ってみると「期待値と“できること”」にギャップを感じるとの声もあり、そのサポートが課題となった。

photo 芹澤佑輔氏(博報堂テクノロジーズ グループ情報システムセンター システム2部)

 「生成AIは社会的なトレンドになっていたこともあり、『業務を飛躍的に改善できるのでは』と過度な期待が集まりやすい傾向にありました。しかし、生成AIの利点はあくまで『平均的なアウトプットを大量に生成できる、かつそれを幅広い業務に適用できる』ことです。このギャップをどう埋めるか検討する必要がありました」(長谷川氏)

 同センターは、利用状況のアンケートを取って利用者のニーズや課題を把握したり、活用のヒントをレクチャーするセミナーを行ったりすることで解決を図ってきた。2024年4月には、プロンプトの保存やWeb検索機能を搭載して初心者でも使いやすくなった博報堂DYグループ用ChatGPT「AI-bow(アイボウ)」をリリースしている。

 ChatGPTの利用環境としてはすでにHDY ChatGPTプレイグラウンドがあったが、「とにかく早く新しい環境を使いたい開発者」は最新モデルを最速で提供可能なHDY ChatGPTプレイグラウンドを。「カジュアルに日常業務に生成AIを取り入れたい利用者」はAI-bowを、といった使い分けが浸透しているという。画一的な環境を提供するのではなく、利用者のニーズに応じて選択肢を用意したことで、「生成AIの利用の広がりを感じている」と長谷川氏、芹澤氏は胸を張る。

 長谷川氏は「社内用のAIチャットbotなどは他社でも開発されており、当社の生成AIを使った取り組みが特別なものだとは考えていません。しかし、グループ情報システムセンターには『生活者発想』をポリシーとする博報堂DYグループのDNAが刻まれています」と話す。

 例えばAI-bowは、利用者が身近に感じられるツール名称やデザイン、直感的なUIを、情シスの若手社員と社内の若手デザイナーが共同で設計したツールだという。こういった開発過程の根底にあるのは、利用者(社内ユーザー)がどのような業務を行い、日々何に苦労して、何に喜びを感じるのか――それらを“生活”と捉えて同じ視点に立つことで生まれるクリエイティビティだ。

photo 実際のAI-bowの画面。こういったシンプルなUIの自社ChatGPTや、前述したRAG機能の実装フォーマットのチャットbot、HDY ChatGPTプレイグラウンドやMicrosoft 365 Copilotなども用意されており、全従業員に必要な生成AI環境を展開している

 「グループ情報システムセンターだけではなく、当社ひいては博報堂DYグループの従業員は皆クリエイティビティを備えています。生成AIを業務に組み込むときも、それは発揮されます。生成AIを業務にどのように生かせばいいか、個々が自律的にその可能性を探ることで、結果的にお客さまの課題解決につなげていく。グループ情報システムセンターがその土台を築いていきたいですね」。長谷川氏はそう語り、笑顔を見せる。

「禁止しない」セキュリティで多彩なニーズにフレキシブルに対応

 もう一方の「守り」の環境整備ではどのような取り組みをしているのか。ITセキュリティ全般を担当する望月英気氏は「むやみに禁止しないこと」をポイントに挙げる。

 「デジタルワークスペース構想では大前提として、従業員がいつでもどこでも安心して働ける環境を提供する必要があります。ゆえに、ゼロトラストセキュリティへの対応はプライオリティが高い取り組みでした。

 広告業界は、とにかくクライアントワークが多い世界です。顧客とのデータ共有が頻繁に発生してさまざまなクラウドサービスを使いますし、従業員が使用するデバイスも多岐にわたります。セキュリティを気にして制限したり、何でも『要申請』にしたりするとスピードが失われ、結果としてお客さまに迷惑がかかります。そのためグループ情報システムセンターでは、いわゆる『禁止する』セキュリティに注力するのではなくリスクに応じてフレキシブルに対応することに意識を向けたゼロトラストの実現を重視しています」

 「社内からのアクセスは安全、社外からの通信は厳しくチェックする」という境界防御ではなく、ITシステムや情報資産への全のアクセスを“信用せず”に安全対策を講じるのがゼロトラストセキュリティの要諦だ。

photo 望月英気氏(博報堂テクノロジーズ グループ情報システムセンター IT監理部)

 望月氏はまず、クラウドサービスの利用状況をモニタリングできるCASB(キャスビー)の導入に取り組んだ。その後、同氏が「ゼロトラストセキュリティの要」と語るインシデント対策としてEDR(Endpoint Detection and Response)にも着手し、現在はセキュリティ状況を24時間監視するサービスのSOC(Security Operation Center)も利用しているという。何か怪しい挙動があるとまず社内で一次対応してインシデントハンドリングをした上で、SOCから到着する詳細なレポートを基に追加で必要な処置を行ったり、復旧や再発防止を行ったりする。まさに日進月歩のセキュリティ強化だ。

 「CASBでは、3万5000ほどあるSaaSのリスク評価をリアルタイムで行い、リスクが高いと判定されたSaaSのみ一時的に利用不可とする方式を導入しました。これにより従業員の柔軟なSaaS利用とセキュリティ確保の両立を実現しており、まさに『禁止しない』セキュリティの一例だと思っています。EDRを用いたインシデント対策では、過度にアラートを出してしまったり、正規のアプリケーション実行を誤って検知してしまったり、環境を整備する中でさまざまな課題がありました。しかし、細かくモニタリングして『安全』と判断できたものはホワイトリストに入れて、リスクが高めなものであっても安全性を確認できれば利用できるようにするなど、定期的にアップデートしてストレスなく働けるIT環境を整備しています」(望月氏)

 守りの環境整備をする上でも、やはりクリエイティビティが重要なキーワードになっている。従業員が使いたいと考える新しいアプリケーションやSaaSを、セキュリティを理由にむやみに制限しない。これが、独創的な発想や価値提供を妨げないデジタルワークスペース構築につながる。「日々変化するリスクに応じた、アダプティブなセキュリティ環境の整備に今後も努めます」(望月氏)

「課題を自ら見つけて解決する」 全従業員がオーナーシップを持つ文化

 グループ情報システムセンターのメンバーは、グループ横断で活躍する情シスとしてどのような意識を持って働いているのか。3人に共通するのは、社会を動かす広告の仕事を支えているという強い自負と責任感だ。

 「私は外部から転職してきたのですが、入ってまず驚いたのがどの従業員も強い責任感を持っていることでした。何かプロジェクトを行う際には自分が全責任を負うくらいのマインドで、全員が良い緊張感を持って働いています。指示されたことではなく、自分で課題を見つけて解決することが称賛される文化がありますし、それが成長ややりがいにつながっていると感じます」(望月氏)

 「『上がこう言っているから』ではなく、自分が『必要だ』『重要だ』と思ったことに着手できる環境が、グループ情報システムセンターひいては博報堂テクノロジーズにはあります。AI-bowも若手メンバーの企画から生まれたものです。こうした強いボトムアップは、当社の特徴的な文化の一つではないでしょうか」(長谷川氏)

 「どうすれば楽しめるかを常に考えています。それが主体的に働くことにつながっていますし、結果的に良いものを生み出す原動力になっていると感じています」(芹澤氏)

 グループ情報システムセンターは、新たなメンバーを随時募集している。特に重視しているのは、主体的に課題を見つけて解決策を立案できる人材だ。同社は情シスやその他事業部問わず、推進者や実践者として活躍できる文化があり、まさに全従業員が前線に立って事業を動かしている。

 好奇心やクリエイティビティを引き出し合いながら、グループで提供できるビジネス価値を最大化し続ける博報堂テクノロジーズ。同社と、その土台を支えるグループ情報システムセンターの今後の進化に目が離せない。

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提供:株式会社博報堂テクノロジーズ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年10月26日