数年前に話題になった「心理的安全性」も、フェーストゥフェースのコミュニケーションなくして実現できませんし、心理的安全性が注目されるきっかけになったのも、Googleの調査でした。
Googleは「一人で仕事をするより一緒に仕事をした方が能力を発揮できる」という理念を大切してきました。「何がチームの生産性を向上させるか?」を追究するため、Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス、以下PA)と銘打って、組織心理学者や社会学の専門家支援のもと調査を実施しました。
PAでは当初、チームワーク、リーダーシップ、チームカルチャーなどに着目しデータを収集して綿密なデータ分析を行い、生産性の高いチームと低いチームの違いを見いだそうとしましたが、いずれも空振りでした。そこで膨大なデータをもとに議論を重ねたところ、あるパターンに気付きます。
「成功の法則性」です。つまり、成功するチームは何をやっても成功し、失敗するチームは何をやっても失敗する。成功するチームではメンバーの能力が最大限に引き出され、「1+1=3、4、5……」となるチーム力がありました。
それを支えていたのが、Psychological safety=心理的安全性です。
成功するチームは、年齢や役職やスキルの差に関係なく、チームメンバー全員がほぼ同じ時間だけ発言していました。それが暗黙のルールとして存在し、自然にそうなる空気=Psychological safetyが熟成されていたのです。
そこでGoogleはある実験に挑みます。
社員5万1000人の中からチームリーダー格の有志を募り、彼らにPAの主旨や調査結果を伝え、「心理的安全性」を育むための具体策を考えるようミッションを出しました。
生産性の上がらないことに悩んでいたチームリーダーの一人は、チームの全員を集め「これから君たちの知らないことを打ち明けよう」と、自身が転移性のがんに冒されていることを告白します。
突然の告白に、最初は戸惑ったチームメンバーでしたが、その後、一人、また一人とチームメイトに「こんなことを言ったら自分のマイナスになるかもしれない」と隠していたプライベートを話し始めました。
そして、気がつくと話題はチームの仕事に転じ、問題点や、生産性を高めるための議論が始まっていったというのです。
つまり、PAで浮かび上がったのは、「一人の人間」として互いに向き合い、同じ空間で共に過ごすことの重要性です。「時間と場」の共有で、共感が生まれ、「私たちが共にいる理由=共に働くこと」という共通認識をもたらし、協働作業のための会話につながっていったのです。
Psychological safety(心理的安全性)を、Trust(信頼) やMindfulness(マインドフルネス)と混同する人もいますが、全く違います。Trustは他者への感情であり、Mindfulnessは自己の感情であるのに対し、Psychological safetyはあくまでも“場”(チームや職場)に抱く感情です。
それは「こんなことを言ったら上司に叱られるのではないか?」「こんな意見では同僚からバカにされるんじゃないか?」「もっと立派なことを言わなきゃいけないんじゃないか?」といった不安をチームメンバーが抱かない空気があるチームです。
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