なぜコンビニ以上に調剤薬局があるのか 「クスリを出さない」発想が求められる理由：スピン経済の歩き方（1/7 ページ）

[窪田順生，ITmedia]

　病院で処方せんを出してもらった後、薬を受け取る「調剤薬局」の倒産が増えている。

　東京商工リサーチ（東京都千代田区）によると、2024年1〜7月で累計22件。前年同期と比べ3.6倍に急増している。

調剤薬局の倒産が増えている（出典：ゲッティイメージズ）

　調剤薬局が苦境にあえいでいるのは、全国で約1000店舗を展開する「さくら薬局」を運営していたクラフト（東京都千代田区）とそのグループ会社8社が2022年2月28日に「事業再生ADR（裁判に代替する紛争解決手段）」を申請したことでも明らかだ。

調剤薬局の倒産件数推移（出典：東京商工リサーチのプレスリリース、以下同）

1〜7月の「調剤薬局」地区別倒産状況

　なぜこんなにも調剤薬局の経営は苦しいのか。

　専門家の皆さんはこの現象について、「地域支援体制加算（地域医療に貢献している薬局を評価するために設けられた加算）がいきなりマイナス改定になったせいで、ここに力を入れていた薬局が大打撃を被っている」「緊縮財政のせいで調剤報酬がケチられて経営が傾いている」など、いろいろな角度から考察しているが、根本的な原因を言ってしまうとこれに尽きる。

　「少子高齢化で社会保障費が膨張しているにもかかわらず、調剤薬局が異常なまでにあふれているから」

クラフトが事業再生ADRを申請

　厚生労働省によると、2022年度末時点で薬剤師のいる薬局数は6万2375施設。日本経済新聞が調査した2023年度のコンビニ店舗数は、5万7594店舗。実は日本は「社会インフラ」と呼ばれるコンビニ以上に、調剤薬局があふれかえっている国なのだ。

都道府県別の薬局数（出典：厚生労働省）

　しかも、「ドミナント戦略」（同一地域内に集中的に出店してロイヤリティを高める施策）で知られるコンビニよりも、はるかに狭い地域内で競い合っている。