HR Design +

企業がエンジニア採用に苦戦する中、増える「文系出身エンジニア」 採用のコツは?約4人に1人が文系

» 2024年12月10日 08時30分 公開

著者:芦野 成則

レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー

一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施

 エンジニアというと、理系出身のイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、近年は文系出身者の活躍も目立つようになってきています。

 レバテックが実施した調査によると、エンジニア経験者の約8割が「新卒でエンジニアになった」と回答しており、そのうち新卒エンジニアの約4人に1人が文系出身者であることが分かりました。

 さらに、この割合は年々増加しています。ITエンジニア就職に特化した新卒学生向けサービスである「レバテックルーキー」の登録者における文系の学生は、直近の3年間で約2倍以上になりました。

新卒でエンジニアになったか(左)、新卒でエンジニアになったとした回答者の属性(画像:レバテック「エンジニアの新卒就活に関する調査」より)

増える文系エンジニアと採用苦戦する企業

 では、昨今の新卒エンジニア採用の実態はどうなっているのでしょうか。

 レバテックが2024年6月に実施した調査によると、2025年卒業予定のエンジニアの採用目標人数の達成度について、「下回った」もしくは「下回る予定」と回答した担当者は全体の35.0%となり、新卒のエンジニア採用に苦戦する企業が多いことが明らかになっています。

エンジニアの採用目標人数の達成度(画像:レバテック「就活・採用実態に関する調査」より)

 こうした状況の中、新卒エンジニアを採用する企業の約9割が文系学生も採用しています。理系のみでなく文系学部出身学生にも採用の間口を広げようとする企業が増えているのです。

 文系学生を採用する理由として最も多かったのは「教育体制が整っており、専攻した学問に関係なく、活躍できると考えているから」(40.2%)でした。文理問わずエンジニアとして活躍できると考えている採用担当者が多いようです。

文系学部出身のエンジニアを採用しているか? ※新卒エンジニア採用担当者120人、エンジニアを目指す2023〜2025年卒業予定のエンジニア志望学生197人を対象に調査(画像:レバテック提供)

エンジニア志望の文系学生、企業選びで「何を」見ている?

 売り手市場が加速する中、文系学生から選ばれるために、企業は何をアピールすべきでしょうか。

 文系学生が就職活動で重視するポイントを見てみると、理系学生とは異なる傾向が見られました。文理共に1位は「給料が良いこと」ですが、文系学生は「プログラミング経験がない学生でも採用していること」を3位に挙げています。

エンジニア志望の文系学生が企業選びで重視するポイント ※新卒エンジニア採用担当者120人、エンジニアを目指す2023〜2025年卒業予定のエンジニア志望学生197人を対象に調査(画像:レバテック提供)

 また、新卒でエンジニアになった文系学生のうち約8割は、学生時代にプログラミング学習を経験していない結果も明らかになりました。多くの学生が入社後の学習やサポートを前提に選考を受けているといえるでしょう。

(出身学部別)学生時代にプログラミング学習をしていたか(画像:レバテック「エンジニアの新卒就活に関する調査」より)

エンジニア志望の文系学生に人気な企業の「共通点」

 実際に、エンジニア志望の文系学生から人気を集めている企業は共通して、教育体制やフォロー体制が充実しています。

 レバテックが2023年1月に、プログラミング学習経験のある大学生・大学院生300人を対象に実施した調査では、3人に2人が学習中に「挫折を経験した」と回答。その理由は「不明点を聞ける環境がなかった・エラーが解決できなかった」(50.7%)が最多でした。

プログラミング学習において挫折した経験はあるか(左)、プログラミング学習において挫折したこと(画像:レバテック「プログラミング教育に関する実態調査」より)

 こうした背景からも、個別のフォローや段階的な学習プログラムを導入し、プログラミング学習中に気軽に相談できる環境を提供する企業が、学生から高く評価されているのではないでしょうか。

 以下では、エンジニアを志望する文系学生から好評を得ている企業の教育体制やフォロー体制について、具体例を紹介します。

・800人規模のSIer企業

 座学研修を全社員で実施した後、実践的な研修では経験者と初学者に分けたカリキュラムを採用。チームを分けるだけでなく、カリキュラムを細分化することで、より手厚いフォロー体制を実現しています。また、外部講師を招き、苦戦している学生に対して研修期間のマンツーマンのサポートを提供しています。

・2000人規模のSIer企業

 入社後1カ月はIT基礎を学習し、その後、配属部門ごとに研修を実施。1人の新人に対してOJT担当だけでなく、年齢の近い先輩にも相談にのってもらえるように2人のサポート体制を実現しています。配属後も「チーム制」を採用しており、新入社員が単独で客先常駐することがない体制を構築。

 また、学びたい社員がいつでも学ぶことができる環境を整えるため、スマートフォンで視聴可能な研修動画サービスを提供。視聴時間が長い社員には表彰制度を用意しています。実際に説明会に参加した学生からは「安心できる」といった声が多く寄せられています。

・3000人規模SES企業

 1カ月の座学研修を経てOJTに移る企業もある中で、4カ月の座学研修を実施。また、入社前からeラーニングで学べる環境を整備し、意欲のある学生が自己学習を進められるよう支援しています。

 出身学部を問わず新卒採用を拡大するには、学生が入社前から自主的に学べる制度を整えたり、継続的に学べる仕組みを提供したりすることも有効だといえるでしょう。

まとめ

 近年、新卒エンジニアとして活躍する文系出身者が増えています。小学校でのプログラミング教育の必修化やオンラインでのプログラミングスクールなどの普及により、文系でも学生時代からプログラミングスキルを習得する環境が整ってきていることが、増加の一因といえるでしょう。

 一方で、文系学生の多くが入社時に技術不足への不安を抱えているのも事実です。企業側が教育体制やフォロー体制をアピールし、入社前から学べる仕組みを提供することで、こうした不安の解消に努めることが重要といえます。

 多様なバックグラウンドを持つエンジニアの採用は、企業にとって新たな価値を生み出し、競争力を高める要素にもなります。文理の枠を越えた採用の取り組みが、今後の企業の成長にもつながっていくのではないでしょうか。

著者プロフィール:芦野 成則

photo

レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー

一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。

レバテックのキャリアアドバイザーとして、年間約300人以上のエンジニア・ITコンサルタント向けのキャリア支援を行い、その後ハイクラス専任チームの立ち上げに従事。

現在は企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、人事目線での社内実情やIT人材の転職市場動向を踏まえ、多角的な視点から採用支援を実施。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR