職場で起こりがちなケースを基に、ハラスメント問題に詳しい佐藤みのり弁護士が詳しく解説します。
Q: 職場のルールとして、「業務中の飲み物は水かお茶のみ」と決められました。カフェオレやスポーツドリンクを持ち込んだ従業員が注意されましたが、これって労働者の権利を侵害しているのでしょうか?
慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。
A: 会社は「服務規律」の一環として、さまざまなルールを設けることができ、原則として、従業員はその指示に従う必要があります。服務規律の内容をどのようなものにするかについて、会社の裁量は広く認められていますが、業務上の必要性や合理性に欠けるルールは違法無効となる可能性も否定できません。
業務上の必要性・合理性があるかどうかは、ルールの規制対象となる従業員の置かれた立場、仕事内容、会社の事業内容、規定の内容などを総合的に考慮し、検討しましょう。その際、従業員の自由や健康などにも十分に配慮することが大切です。
「業務中の飲み物は水かお茶のみ」というルールはなぜ導入されたのでしょうか。業務中に、従業員がカフェオレやスポーツドリンクを飲むことで、業務上、何か不都合があるのでしょうか。
例えば、衛生管理が強く求められる職場で、砂糖が入った飲料を飲むことにより虫が寄ってくる危険性があり、その危険を排除するために、業務中の飲み物を一律に水かお茶に制限したのであれば、業務上の必要性や合理性が認められる可能性があります。ルールが適切なものであれば、それに違反した従業員を注意することも許され、労働者の自由や権利を不当に侵害したことにはなりません。
ただし、従業員がルールに違反した場合に、不利益な処分を下す場合は、特に慎重になる必要があります。処分を検討する際は、ルールに違反したことにより、具体的に業務にどのような悪影響が及んだのかを重視し、それに見合った処分にとどめることが重要です。
その際、従業員の置かれた立場、仕事内容、規則に従うことによって従業員が被る不利益の程度、処分までの経緯、処分の内容や程度などを総合的に考慮するようにしましょう。例えば、ルールには違反しているけれど、持ち込んだ飲み物が無糖のコーヒーなどであり、衛生管理上問題がなく、業務に特に悪影響がなかったような場合、懲戒処分にするのは行き過ぎだと思われます。
行き過ぎた処分を行えば、処分された従業員が納得せず、場合によっては裁判を提起され、後に処分が違法無効と判断される可能性があります。
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