米バンク・オブ・アメリカの最新リサーチノートによれば、Amazonが導入を進める配達用ロボットは、2032年までに年間で最大71億ドル(約1兆1100億円)規模のコスト削減を実現する可能性がある。
「ロボットは小売におけるコスト削減の大きな機会であり、Amazonの小売部門をAI戦略の一端として位置付ける要素となる」と、同社のアナリストは6月6日のリサーチノートで述べた。
この分析は、テクノロジー系メディア「The Information」が報じた内容を受けたもの。報道によると、AmazonはAIを搭載したヒューマノイド型(人型)ロボット向けのソフトウェアを開発しており、将来的には人間の配達員に代わって業務を担う可能性がある。情報提供者は「事情に詳しい人物」とされ、Amazonはコメントの要請に対して即時の回答を行っていない。
The Informationの報道によれば、Amazonは屋内に障害物コースを設け、人型ロボットに対して荷物配送の訓練を行っている。初期のコースはカフェ程度の広さだが、今後は規模を拡大し、公道でのテストも視野に入れているという。
最終的には、これらのヒューマノイドロボットがAmazonの電動配送車「リヴィアン」(Rivian)に同乗し、顧客の玄関先まで荷物を届けるというビジョンが描かれている。
「自動運転車(Autonomous Vehicles: AV)と同様に、実運用に至るまでには数年にわたるテストが必要とされるだろう」と、バンク・オブ・アメリカの主任アナリストであるジャスティン・ポスト氏率いるチームは分析する。また、「地域ごとの規制当局からの承認が課題となり、急速な地域拡大には制約が生じる可能性がある」とも指摘している。
加えて、消費者がロボットによる配達を受け入れるまでには一定の時間を要するとみられている。
Amazonは2012年にロボティクス企業「Kiva Systems」(キバ・システムズ)を買収して以来、ロボット導入を大幅に拡大してきた。2024年6月2日の同社レポートによれば、現在では20種類以上・75万台超のロボットを稼働させており、「フルフィルメントセンター(物流拠点)ではすでにロボットが深く定着しているが、ロボット導入の全体としてはまだ初期段階にある」との見方を示している。
Amazonは5月、自社の物流ネットワーク全体に配備を予定している複数の新型ロボットを公開した。これらのロボットは、従業員による手作業の軽減・削減を主目的として開発されている。
また、2023年10月には、倉庫業務向けに二足歩行ロボット「Digit」(ディジット)の試験運用を開始する計画を発表した。このロボットは、Amazonが10億ドル規模で運営する「インダストリアル・イノベーション・ファンド(Industrial Innovation Fund)」を通じて出資した米オレゴン州コーバリスの企業「Agility Robotics」(アジリティ・ロボティクス)が開発したもので、同社が長年にわたり推進してきた“次世代技術”への投資の一環となっている。
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