2024年には宝産業も買収している。同社は店舗運営ではなく、原料の製造を担う。麺・スープ・タレのほか、餃子やチャーシューなども生産している。スープは豚骨や鶏、魚介ベースなどを取りそろえ、タレもしょうゆ・塩・みそなど一通りのジャンルを手掛ける。宝産業の商材だけでラーメン店が開業できるのが強みだ。
拠点は京都・千葉のほか、アジアや欧米にもあることから、吉野家HDが海外出店を強化する上で、ジャンル・拠点ともに多様な宝産業を選んだと考えられる。国内1200店舗以上を展開する吉野家もそうだが、100店舗以上の大規模チェーンとして展開するには製造拠点が欠かせない。
直近では京都・キラメキノ未来も買収した。鶏白湯らーめんと台湾まぜそばの2軸で提供するブランド「キラメキノトリ」を展開しており、買収時点で京都・大阪など近畿4県に22店舗を出店していた。
実は、吉野家HDがラーメン事業に参入するのはここ数年が初めてではない。かつて、2007年にアール・ワンを設立し、経営難に陥っていたラーメン一番本部からラーメン事業を取得している。ラーメン一番本部は180円の激安ラーメンが売りの「びっくりラーメン一番」を展開しており、再建を図ったわけだ。
しかしテコ入れがうまくいかず、約200あった店舗は大幅に縮小。ラーメンを250円に値上げしたものの再起できず、リーマンショックの影響もあって2009年に吉野家HDはラーメン事業を畳んだ。びっくりラーメン一番に対する当時のレビューを見ると、価格を評価する意見が多い一方、味のシンプルさやチャーシューの薄さ、不十分な量を批判する意見も見られる。デフレ時代において牛丼やファストフードなど他業態のチェーンに負けたと考えられる。
一方、再参入で買収したせたが屋、ウィズリンク、キラメキノ未来はラーメン1杯の価格が1000円前後であり、安売り競争をしているわけではない。経営も安定しており、びっくりラーメン一番のように失敗する確率は低そうだ。
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