デジタルアイデンティティ SEOエヴァンジェリスト、コンサルタント
SEO集客からの売り上げ・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングを専門としている。
米国では5月20日以降、検索体験を刷新するGoogleの新機能「AIモード」が一般提供され、さらにパーソナルアカウントの条件付きでインドでもAIモードが開放されました。日本ではまだ公開されていませんが、一部では日本語の対応ができるとも言われています。また、7月17日には新たなAIエージェント機能の導入が発表されるなど、Googleのここ数カ月の動きは非常に活発です。
一方で、ライバルのOpenAI社も負けておらず、AI搭載の独自Webブラウザ開発、決済機能の統合、そして外部検索エンジンを従来のBingからGoogleへ切り替える動きなど、多方面での革新的な取り組みを続けています。
前回の記事でGoogleのAIモードに焦点を当てた解説を行ったため、今回はOpenAI・ChatGPTにフォーカスし、直近の動向とそれが検索体験にもたらす変化について解説します。
前回の記事:AIは“ググる”を終わらせる? Google検索の大変革期に何をすべきか
まず、OpenAI社の直近の動きで注目したいのは、独自ブラウザの開発についてです。
OpenAIはAIを搭載した新たなWebブラウザの開発を本格化させており、CNET Newsによると数週間以内にも正式発表されると報じられています(※)。これはGoogle Chromeが世界市場の約68%という圧倒的なシェアを維持する中、ChatGPTでAIブームを牽(けん)引してきたOpenAIがついに「検索」という情報の入り口そのものに革新をもたらすべく、直接乗り込む動きです。
※:OpenAI製ブラウザ、まもなく登場か--Googleが支配するウェブに風穴を開ける可能性
新ブラウザはAI活用による直感的な情報探索、各種サービスとの連携強化、ユーザー体験の刷新などが予想されており、Google Geminiによる既存のWeb体験の進化に対抗する「次世代の検索プラットフォーム」として注目を集めています。
また、OpenAI自身も独自ブラウザを持つことでユーザーデータへの直接的なアクセスが可能となり、従来の広告モデルや検索順位の構造すら再構築しかねないインパクトが期待されています。生成AIによってWebの在り方自体がこの2年で大きく変わる中、新しい情報探索環境として業界の勢力図が塗り替えられる可能性が高まっています。
その他、注目したいOpenAI関連の動きについて見ていきましょう。
7月、OpenAIはChatGPTに新たなAIエージェント機能「ChatGPT agent」を正式導入しました。これは「deep research」「Operator」など既存技術を統合し、ユーザーの複雑な指示に対して自律的にタスクを遂行する仮想コンピュータ機能です。例えば、会議の調整や料理材料の手配、競合分析レポート作成まで幅広く代行でき、ユーザーが操作を中断可能な柔軟性も備えています。
さらに決済機能統合により、チャット内で商品購入が完結可能となり、EC事業者はShopifyなどのサードパーティから商品情報を直接提供する新たな流通チャネルも誕生。これによりショッピング体験が大幅にシームレス化しています。
一方で、英SEO会社のDigitaloftのJames Brockbank氏の調査によると、ChatGPTの回答にハッキングサイトと期限切れドメインから引用といったLLMスパムが混入し始めた問題も顕在化しています。ChatGPTの評価プロセスがドメインの権威性に大きく依存していたり、日付の最新性を重視する傾向から信頼性の低い引用がなされてしまう、といった情報の品質の維持が課題となってきています。
他にも、Web検索を実行するChatGPT searchが、その主要な外部検索エンジンをBingからGoogleへと密かに移行したのではないか? と、仏デジタル・パフォーマンス・エージェンシーが発信し話題に。現時点でOpenAI社による公式発表はありませんが、もし事実であればGoogle向けのSEO対策=ChatGPT検索最適化、という構図になる可能性が高いと言えます。
OpenAIが独自ブラウザを導入しようとしている動きは、情報探索の主導権を巡る構図に変化をもたらす可能性をはらんでいます。Googleの検索支配に対して本格的に挑む姿勢が見え、業界の勢力図を塗り替える転機となるかもしれません。
ChatGPTは単なる対話AIにとどまらず、タスク自動化や商取引を担うプラットフォームへと進化しつつあります。一方、LLMスパムへの対応はOpenAIにとって喫緊の課題です。
現時点でマーケターが大きく対応を変える必要はありませんが、8月に予定されているGoogleの独占是正の動きと併せて、今後のOpenAIの展開を注視しつつ、基本に忠実なSEOを継続していくことが最善の戦略と言えるでしょう。
田中雄太
たなか・ゆうた デジタルアイデンティティ SEOエヴァンジェリスト、コンサルタント。SEO集客からの売り上げ・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングが可能。『薬機法管理者』の資格を有し、表現の規制が厳しい薬機法関連分野のマーケティングにも精通。
デジタルアイデンティティWebサイト:https://digitalidentity.co.jp/
Xアカウント:@yuuta_tanaka88
米Google幹部を直撃 年間「5兆回超」の検索は、AIでどう変わるか?
Geminiを業務で使いこなす! Google Cloudが指南する「プロンプト入力」4つのポイントは?
生成AI時代のSEO「LLMO」 企業は“AIに選ばれるため”に、今何ができるか
AIは“ググる”を終わらせる? Google検索の大変革期に何をすべきか
メガネを「たまに買う」ではなく「よく買う」ものに──Zoffは一体何をした?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング