米Walmart(ウォルマート)は非英語話者の顧客向けに検索体験を改善することを目的に、AIを用いて検索用語を抽出し、言語学者が翻訳プラットフォームで精査できる仕組みを導入しようとしている。AIは単なる直訳を越え、文脈や意図を考慮した検索結果を提供する。
例えば、スペイン語で「Tシャツ」を指す一般的な単語は「camiseta」だが、メキシコでは「playera」、チリでは「polera」と呼ばれることが多い。AIエージェントはこうした用語を抽出し、言語学者やエンジニアのチームに送信。正しい意味に翻訳し、プラットフォームに追加する。
高品質な翻訳を実現することで、包括的にアクセスしやすいデジタル体験を提供し、顧客体験を向上させる狙いだ。
カナダのコンサルティング会社Info-Tech Research Groupのジュリー・ゲラー氏は、「文脈に沿った翻訳は、顧客が購入の意思決定に必要なコンテンツをスムーズに利用できるようにする」と指摘する。「高品質な翻訳は、ブランドに忠実な形で商品情報を伝えることで、洗練された体験を提供する」
AIの利点は、従来のキーワードベースのシステムでは誤解されがちな顧客の意図を、回避できる点にある。
「例えば、米国の購入者が『sweater』(セーター)を検索する一方、英国の購入者は『jumper』(ジャンパー)と検索する(※)。どちらも同じ商品を探している場合、両方に適切な検索結果が返されるべきだ」とゲラー氏は指摘する。
※英国では一般的にセーターのことをジャンパーと呼ぶ(編集部注)
「こうした賢い翻訳機能により、従来は単純に言葉を置き換えるだけだった検索が、顧客の行動や検索結果の反応を学習する仕組みに変わり、使えば使うほど検索体験が改善されていく」(ゲラー氏)
Walmartは、ブランド名の誤解を避ける検索もAIでサポートしている。例えば、カナダのケベック州で「yogourt liberte」と検索する顧客は「freedom yogurt」(自由のヨーグルト)を探しているわけではなく、「Liberte Yogurt」というブランドの商品を探している可能性が高い。
ゲラー氏によると、1つの国でのみ事業を展開している企業でも、デジタル翻訳機能を向上させることでメリットを得ることができるという。
ゲラー氏は、「優れた翻訳機能だけでも、小売業者は大きな競争優位性を獲得できる。例えば、米国におけるスペイン語、カナダにおけるフランス語、あるいはヨーロッパ各地の文化圏のサブグループなどだ」と指摘。「複数の言語でシームレスな体験を提供する企業は、十分なサービスを受けられていない顧客との信頼関係を迅速に構築し、市場シェアを拡大することができる」
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