「映画産業は奪われた」 トランプ大統領、米国外制作映画に100%関税を表明 ハリウッドは困惑

» 2025年09月30日 21時39分 公開
[ロイター]

 ドナルド・トランプ米大統領は、国外で制作され米国に輸入される全映画に対し100%の関税を課すと表明した。ハリウッドのグローバルなビジネスモデルをひっくり返すと、5月に警告した内容を繰り返した。

 この動きは、トランプ氏が保護主義的な通商政策を文化産業にまで拡大する姿勢を示すものであり、国際共同制作や海外興行収入に大きく依存する映画スタジオに不透明感をもたらしている。

 「米国の映画製作事業は、他国によって奪われてきた。赤ん坊からキャンディーを奪うように簡単にだ」とトランプ氏は自身のSNS「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」に投稿した。

 ただし、外国産映画に100%の関税を課すために、トランプ氏がどのような法的根拠を用いるのかは明らかになっていない。

movie ドナルド・トランプ米大統領は、国外で制作され米国に輸入される全映画に対し100%の関税を課すと表明(出典:ロイター)

複数の国が関わる映画制作 ハリウッドに広がる波紋

 ホワイトハウスはロイターのコメント要請に応じず、関税の実施方法についても説明していない。米大手スタジオのワーナー・ブラザース・ディスカバリー、パラマウント・スカイダンス、ネットフリックスも回答はなく、コムキャストはコメントを控えた。

 「不透明感が強く、答えよりも疑問を増やしている」とPPフォーサイトのアナリスト、パオロ・ペスカトーレ氏は述べた。「現状ではコスト増が避けられず、最終的には消費者に転嫁されることになるだろう」と同氏は指摘する。

 トランプ氏は5月に映画関税の構想を初めて示したが、詳細はほとんど明かさず、対象が特定の国なのか全ての輸入作品なのかも不明のままだった。

 この発表後、米国の映画労働組合やギルドの連合体はトランプ氏に書簡を送り、議会で策定中の調整パッケージに国内映画制作への税制優遇措置を盛り込むよう要請した。これにより、映画やテレビ番組の制作を米国内に戻すことを狙った。

 米映画協会(Motion Picture Association)によると、米国映画産業は2023年に153億ドルの貿易黒字を計上しており、海外市場向け輸出は226億ドルに達していた。

 複数のスタジオ幹部は年初、映画関税がどのように施行されるのか「困惑している」とロイターに語った。現代の映画は制作、資金調達、ポストプロダクション、視覚効果が複数の国にまたがるのが一般的だからだ。

 ハリウッドは近年、カナダ、英国、オーストラリアといった海外制作拠点にますます依存している。これらの国々は税制優遇措置により、スーパーヒーロー大作から配信ドラマまで大規模制作を誘致してきた。特にアジアや欧州では外国スタジオとの共同制作が一般化し、現地のパートナーが資金調達、市場アクセス、配給網を提供している。

 業界幹部らはさらに、広範な関税が海外撮影に従事する数千人の米国人労働者にも影響を及ぼすと警告している。彼らは視覚効果アーティストから撮影クルーに至るまで、多国間での協働によって仕事をしているためである。

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