日本国内の飲食店や小売店で、アサヒグループホールディングスのビールなどの在庫が不足し始めている。サイバー攻撃の発生から5日目となったが、復旧の見通しは立っていない。
「スーパードライ」や「ニッカウヰスキー」で知られる同社は、サイバー攻撃によるシステム障害を受け、9月29日から日本国内での受注処理、出荷業務、コールセンター業務を停止した。
水曜日から一部商品の注文を再開したが、担当者が顧客を直接訪問し、手書きで注文を受けたという。現在、食品やソフトドリンクの注文は継続して受け付けているが、酒類については出荷を優先するため新規受注を停止している。3日には手作業で処理した最初の注文分の出荷が始まった。
アサヒグループHDは3日、緊急対応の最新状況を公表。同社サーバがランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃を受けたことが確認されたと発表した。また、来週にはコールセンター業務を再開し、顧客からの電話問い合わせに対応する方針を示した。
同社は外部の専門家と協力しながらシステム復旧に取り組んでいるが、全面的な業務再開の時期は依然として不明だという。さらに業績への影響についても調査を進めている。
今回の侵害は、世界的な企業を狙ったサイバー攻撃やランサムウェア攻撃の一例だ。英国では先月、高級自動車メーカーのジャガー・ランドローバーが工場の操業停止に追い込まれた。その他、マークス&スペンサーやCo-opグループも被害を受けている。
普段はアサヒブランドのビールを提供する東京のある飲食店では、「スーパードライ」が最後の樽となったという。前日には、仕入先が代替としてサッポロのビールを持ち込んだ。「ちょっと困りますね」と話すのは、焼き鳥専門店の料理長。「うちは焼き鳥専門で、スーパードライとの相性が抜群です。お客さんからもそういう声が多いので、この先の不足が心配です」
コンビニ大手のローソンは、アサヒ製品の不足が予想されるとして、代替商品の販売準備を進めていると説明。ファミリーマートとセブン‐イレブンも影響を受けていると明らかにした。
なお、アサヒの株価は今回の攻撃発表後に約4%下落。2月以来の安値を記録した。

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