寿司、パスタ、ステーキ……牛丼だけじゃない「松屋」から透けて見える吉野家、ゼンショーとの「差」(2/3 ページ)

» 2025年10月10日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

 もちろん、単独での出店も進めている。例えば「すし松」は2007年に登場した寿司店で、タッチパネルで注文した料理がレーンで届く注文式だ。まぐろは1貫で77円、生サーモンは165円など、相場観でいえば代表的な回転寿司チェーンよりも高く、銚子丸のような「グルメ回転寿司」よりは低価格である。

松屋フーズHDが展開しているすし松(出所:同チェーン公式Webサイト)

 主な立地は駅付近だ。手狭な場所にも出店し、現在は20店舗を展開する。席数は30〜40席程度で、スシローやくら寿司といったチェーンと比較して小規模である。近くに松屋や松のやがある店舗が多く、物流効率を考慮していると考えられる。

 駅前の小規模テナントは、郊外型が主軸の回転寿司チェーンが不得意とする場所だ。値上げで「1皿100円」のモデルが崩壊してスシローなど有名チェーンの価格優位性が薄れている現状、すし松は勢力を拡大できるかもしれない。

7月には麺類の新業態も開始

 松屋フーズHDは中華にも進出している。「松軒中華食堂」を2017年、京王線の千歳烏山駅前に出店した。現在は世田谷区や練馬区など10店舗を展開する。主な立地は駅前やビル街だ。ラーメンは醤油と塩を中心に、担々麺や味噌豚骨ラーメンなどもそろえる。肉野菜炒めやレバニラ炒めなどの定食があるほか、チャーハンの種類が多い点が特徴的だ。飲酒客も対象としている。

2017年から展開している松軒中華食堂(出所:松屋フーズHD公式Webサイト)

 多店舗展開に至っていないのは、競合が多いからだろう。都内の駅前は日高屋が抑えている。麺類は650〜900円台で、日高屋と比較して高いのもネックだ。定食は1000円以下だが、チャーハン以外のメニューで他社に対する特徴は見当たらない。現状のメニュー構成や立地戦略では規模拡大は難しいかもしれない。

 松屋フーズHDは7月末にラーメン店「松太郎」を新宿にオープンした。以前に松屋があった場所である。カウンター20席の狭い店舗で、松軒中華食堂と同じく醤油と塩の2種類をベースにしている。麺類が多く、街中華のような炒め物はない。ミニ丼やおにぎりを提供するなど、全体的に炭水化物に偏重しており、サイドメニューに乏しい印象だ。麺類に絞り込む以上、ラーメンの味そのものが成否を左右しそうだ。

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