羽田近くの施設はガラガラ、成田の周辺は…… なぜ、空港近くの商業開発は失敗しがちなのか(2/3 ページ)

» 2025年12月09日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

個人投資家が飛び付いた「みんなで大家さん」の仕組みとは?

 開発地は空港から徒歩で行けない上に、原野だった場所だ。新駅の構想もアピールしている時点で、1970年代に流行った不動産商法を思い起こさせるが、利回りなどは魅力的で、3万8000人が約2000億円を出資したとされる。しかし同ファンドでは7月から分配金の遅延が発生。遅延はシリーズ成田以外でも発生し、投資家による集団訴訟も相次いでいる。

 開発現場は現在、更地のままで建築物はない。そもそも施設がなく、賃料収入がないので分配が滞ったと考えられる。他のファンドにも影響していることから、自転車操業に陥った可能性が高い。

 さらに、開発地の約4割を保有するNAAは、開発用地の賃貸借契約を11月末で終了し、契約更新をしないと発表した。NAAは年間1800万円で土地を貸していた。共生バンクからすれば、訴訟に土地の縮小と八方ふさがりの状況だ。

 だが、仮に竣工まで進んでいたとしても、多くの課題が現れていたかもしれない。というのも、空港近くの商業施設が集客に失敗する事例がいくつか存在するからだ。

テナントが「わずか3つ」まで激減したモールも

 新千歳空港の隣駅で、2005年にオープンした「千歳アウトレットモール・レラ」はその一つだ。初年度に来客数が400万人を突破し、拡張工事を実施した2007年には500万人を突破。屋外型のモールであり、その珍しさや安いブランド品が注目され、主に道民が利用する場となっていた。

 しかし2010年に「三井アウトレットパーク 札幌北広島」が開業すると、テナントの空きが目立つようになった。札幌周辺では2000年代からモールの開発が相次いでおり、競合が増えたことも関係している。レラは当初の話題性に乗っただけともいえ、積雪地帯において、屋外型モールであったこともマイナスに影響した。

 2010年代から営業担当者を海外に派遣、ツアーを誘致するなどインバウンド強化を図ったが、道民の減少を補うことはできなかった。その後、2024年11月に大規模商業施設としての営業を終了した。公式Webサイトによると、現在入居するのはわずか3テナントに留まっている。

 空港近くの施設は観光客との相性が良さそうに見えるが、観光客は空港付近で遊びたいわけではない。まずは札幌を含んだ中心地を目指すはずで、わざわざ1駅隣で降りるモチベーションは低い。そもそも新千歳空港内に数多くの店舗・飲食店テナントがあり、空港自体が競合なのである。

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