地方の観光地を衰退させたのは誰か:水曜インタビュー劇場(観光公演)(3/6 ページ)
海はキレい、山はキレい、でも街が汚い……。有名な観光地でも、老朽化した建物が並んでいるところが日本中にある。政府は「観光立国」を目指すというが、寂れた風景を見るために外国人観光客はやって来るのだろうか。
みなさん“独占”が大好き
アトキンソン: 新しいホテルがオープンすると、競争相手が増えますよね。そうなると、古くて汚いホテルに、泊る客が減ってしまう。だから、役所に訴えるんですよ。「絶対に新しいホテルを造らせるなよ」と。
みなさん“独占”が大好きなんですよ。でも、ここで誤解しないでください。独占が大好きなのは、ホテルや旅館だけの話ではなく、さまざまな業界で同じようなことが行われているのではないでしょうか。
土肥: 建物は老朽化しているのに、無理矢理観光客を呼ぼうとする。また立派なホテルができると倒産してしまうので、許可しないでくださいと訴える――。なぜこうした発想になってしまうんですかね。
アトキンソン: これまで人口が右肩上がりで増えてきたからですよ。自然に人口が増えていたので、売り上げも伸びていった。
しかし何の工夫もせず、いわゆる“待ちの姿勢”だったホテルや旅館は、90年代に入って人口増が止まり、どんどん売り上げが落ちていった。「○○温泉 観光客が減少。売り上げはピーク時から半減」といったニュースを目にすることがありますが、なるべくしてなったわけですよ。日本には働く世代が減少しているので、待ちの姿勢で続けていれば、当然売り上げは減少します。
土肥: 「景気が悪いから」「行政が悪いから」「総理大臣が悪いから」といった感じで、外部環境や他人のせいにして、自分たちは何も悪くないという人がいますよね。観光地のホテルや旅館だけでなく、“○○が悪いから、売り上げが落ち込んだ”といった声をよく聞きます。
アトキンソン: 「真のスコットランド人(No true Scotsman)」という詭弁をご存じでしょうか?
土肥: 真のスコットランド人? いえ、知りません。
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