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地方の観光地を衰退させたのは誰か水曜インタビュー劇場(観光公演)(4/6 ページ)

海はキレい、山はキレい、でも街が汚い……。有名な観光地でも、老朽化した建物が並んでいるところが日本中にある。政府は「観光立国」を目指すというが、寂れた風景を見るために外国人観光客はやって来るのだろうか。

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真の日本人ではありません


新・観光立国論』(著・デービッド・アトキンソン氏、東洋経済新報社)

アトキンソン: スコットランド人のところを「日本人」と置き換えて話をしますね。日本人は道路にゴミを捨てない、手先が器用だ、年上の人に敬語を使う――といった項目をあげます。で、外に行って、道路にゴミが落ちていました。このゴミは誰が捨てたんだ? と聞かれたときに、これを捨てたのは「真の日本人ではありません」と答える。

 要するに、自分の定説の枠にあてはまらなければ、「真の日本人」という概念をもってきて、その人たちをデータから外すんですよ。

土肥: 手先を器用に動かして、精密なモノをつくっていれば、その人は「真の日本人」となるわけですね。それにしても都合の悪い定義はいくらでも変えることができますよ。

アトキンソン: 日本人は勤勉で、犯罪は犯さない。と定義したのに、凶悪な犯罪が起きれば、「あの人間は真の日本人じゃない」となる。

 言っていることが「正しい」「正しくない」といった話ではなく、自分にとって都合の悪いデータは削除するという考え方ですね。観光地でさびれたホテルを運営している人たちも、自分たちにとって都合の悪いデータを削除しているんですよ。

土肥: 待ちの姿勢を続けていて、設備投資をしようとしない。

アトキンソン: ですね。

土肥: 不都合なデータを削除する背景には、何か人間の心理が働いているような。

アトキンソン: データを削除しなければ「結論」を変えなければいけません。結論を変えるのは「面倒」だから変えないんですよ。だから結論に執着するんですよね。

 何かの問題があって「そーした考えはいけないよ」と指摘したら「お前は、真の日本人じゃない」と反論される。そして、あらゆることが「面倒」という2文字で、うやむやにされてしまう。

土肥: ふむふむ。

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