「野蛮人」と蔑まれていた日本人観光客が「世界一」になったワケ:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
訪日外国人のマナーの悪さを取り上げる報道が増えてきた。「外国人に比べて日本人はマナーが良い」と思うかもしれないが、今から30年ほど前、海外から日本人観光客のマナーの悪さが問題視されていたのだ。例えば……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先週、TBSの『Nスタ』で「外国人観光客の迷惑・危険行為」が特集されていた。
山梨県忍野村(おしのむら)にある忍野八海(おしのはっかい)の池で、外国人観光客が大量のコインを投げ入れて、地域住民がかなり問題視しているとか、民家の敷地内に中国人観光客が入ってパシャパシャと記念撮影をするなんてトラブルを紹介して、VTRの終わりには「あなたのまわりの疑問や怒り! 情報提供をお願いします」とテロップを出して情報提供まで呼びかけるチカラの入れようだった。
TBSといえば『噂の東京マガジン』のように住民の反対運動を煽(あお)って、それで大騒ぎするというマッチポンプを得意とするので、この「不届き外国人観光客に住民の怒り爆発」もコンテンツ化する気マンマンなのはよく分かる。ただ、このようなトレンドの兆しは他メディアにもみられる。今後、テレビや新聞で「外国人観光客叩き」が増えていくだろう。
訪日観光客数が右肩上がり、オリンピックへ向けて「観光立国」の機運が高まっているなかで、「しかし、いい話ばかりじゃありません」と逆張りを打つのはメディアの性(さが)みたいなものなのだが、世界的にみても「野蛮な外国人」というのは、数字がとれるキラーコンテンツの側面があるのだ。
例えば『読売新聞』にこんな記述がある。
至る所で、たばこを吸い、吸いがらを捨てる。とくに男性の団体客は傍若無人だ。「カネを払うから、島巡り遊覧飛行の窓際座席を確保してくれ」と要求する客もいる。「先着順に着席です」と断る。と、客は空港のゲートが開いたとたん、全力疾走して行列を追い抜く。それをアメリカ人が冷笑して見ている。
やれやれ、これだから中国人観光客はと顔をしかめる人も多いかもしれないが、実はこれは「日本人観光客」の行動なのだ。
関連記事
- 日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません
「訪日客が1300万人を突破」といったニュースを目にすると、「日本は観光立国になったなあ」と思われる人もいるだろうが、本当にそうなのか。文化財を修繕する小西美術工藝社のアトキンソン社長は「日本は『観光後進国』だ」と指摘する。その意味とは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 宋文州氏が語る、日本人が「多様性」を受け入れられないワケ
日本に多様性は必要だと思いますか? こう聞かれると、ほとんどの日本人は「必要だ」と答えるはずだ。にも関わらず、なぜ日本では多様性を受け入れる考え方が広がらないのか。その疑問を、ソフトブレーン創業者の宋文州氏にぶつけてみた。 - 中国人観光客が「爆買」する日本の炊飯器は何がスゴいのか
中国人観光客の爆買によって、日本製の炊飯器が売れている。そんなことを聞くと、「多くの中国人は日本の技術力を高く評価しているんだなあ」と思うかもしれないが、本当にそうなのか。売れている背景を探っていくと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.