「野蛮人」と蔑まれていた日本人観光客が「世界一」になったワケ:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
訪日外国人のマナーの悪さを取り上げる報道が増えてきた。「外国人に比べて日本人はマナーが良い」と思うかもしれないが、今から30年ほど前、海外から日本人観光客のマナーの悪さが問題視されていたのだ。例えば……。
世界トップレベルの品のいい観光客
バーバリアン(野蛮人)とバカにされてから13年が経過した2000年、米オンライン旅行会社エクスペディアが世界の観光都市17カ所の観光局などを対象に調査したところ、日本人観光客の評価はドイツ、米国に次いで第3位。マナー部門ではドイツに次いで第2位に浮上したのだ。落書きをして怒られていた日本人がわずか13年で見事、「世界トップレベルの品のいい観光客」に生まれ変わったというわけだ。ちなみに最近、ドイツの市場調査会社が行った調査では、日本人観光客が「マナー」「清潔さ」「静かさ」「クレーム率」などで世界最高点を獲得している。
ここまで変貌を遂げた背景に、何があったのだろうか。
1988年、今の中国人みたいにどこにいっても「アジアの成金め」と鼻つまみ者扱いで、これはまずいと考えた日本政府は「日本人海外旅行安全等対策研究会」を立ち上げ、航空機内でマナーの大切さを呼びかけるアナウンスなどを開始した。民間も動き出し、旅行会社、代理店からなる日本旅行業協会が「海外旅行安全の手引き」という「ガイドブック」を初めてつくったのもこの時期である。
このような“教育”がなされたのは、日本人観光客が右肩上がりで増加していたことが大きい。嫌われてはいたが、世界中どの国にいっても日本人はありがたがられた。なぜか。その謎に答えるようなクイズが『毎日新聞』(1995年6月27日)に出ている。
Q1.観光客の減少を懸念するフランス政府は、日本人を優先して誘致しようと観光業者に呼びかけた。その理由は?
A.金離れがいい
B.マナーがいい
C.団体が多く扱いやすい
D.仏語が話せないので文句が少ない
答えはAである。日本人は他の国の観光客に比べ、平均4倍の金を落とす“上客”として評判が高かった。確かに当時はシャネルやアルマーニで「爆買」をする女子大生や働く女性に世界中の観光業者は衝撃を受けた。今、中国人観光客の「爆買」にわれわれが口をあんぐりとしているのとまったく同じである。
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