「野蛮人」と蔑まれていた日本人観光客が「世界一」になったワケ:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
訪日外国人のマナーの悪さを取り上げる報道が増えてきた。「外国人に比べて日本人はマナーが良い」と思うかもしれないが、今から30年ほど前、海外から日本人観光客のマナーの悪さが問題視されていたのだ。例えば……。
潤うのはホテルなどの観光業だけだと妬みみたいなことを言う人もいるが、関連産業への波及効果もあるし、地方にまず必要なのは「カネを循環させる」ことだ。そしてなによりも大規模製造業が次々と撤退している中で、「雇用」を生み出すことができるのだ。
さらに言えば、「マナーの悪さ」を逆手にとる方法もある。「バーバリアン」だった日本人観光客が欧州を暴れまわっていた時、フィレンツェはファストフードなど安い店の新設を禁止。レストランやホテルも高額で非常にカネのかかる「高級な観光地」だというPRを展開した。
どうせマナーが悪いのなら、カネ払いのいい日本人に狙いを定めてガッチリと搾り取ってやろうと開き直ったのである。結果、日本の成金たちが押し寄せて、フィレンチェは大いに潤った。
ぶっちゃけ、中国のバブルもいつまでもつか分からない。バッシングなどしている暇があるなら、日本もフィレンチェ方式でカネ払いのいい中国人観光客に狙いを定めて、今のうちにガッチリと搾り取るべきではないのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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