任天堂のDNA「ブルーオーシャン戦略」の行く末:忘れられた戦略(5/5 ページ)
任天堂の戦略は「ブルーオーシャンである」と言われていますが、ブルーオーシャンはすっかり下火に。その背景を明らかにするとともに、日本企業が今後、任天堂と同じ戦略を展開した場合、実効性が上がるものなのかどうか、その可能性を探ります。
日本における「ブルーオーシャン市場の開拓」の可能性
ブルーオーシャン戦略は、任天堂など一部の企業を除くと、日本ではこのまま忘れ去られていくのでしょうか? しかしながら、ブルーオーシャン市場の開拓に挑戦し、見事に成功している企業が何社も存在していることも事実です。
その1つとして、典型的なレッドオーシャン市場である外食業界において、ブルーオーシャン市場を開拓して成功した「俺の株式会社」の例をご紹介します。
「俺の株式会社」は、ブックオフの創業者坂本孝氏が2012年に設立した、外食事業を展開する企業です。2012年に開業した「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」をはじめとした「俺の」を冠する料理店の業態は、一流のレストランで腕をふるっていたシェフを招へいし、高級食材を使いながらも「立席」をメインとすることにより客の収容数を高めると同時に、回転を速めることにより低価格での料理提供を実現し、急成長を遂げています。
坂本孝氏は、普段高級レストランなどで食事をする習慣をもたない顧客層の存在に着目し、「高級レストランで提供している食事を、格安料金で提供する」という事業コンセプトにより、外食市場という典型的なレッドオーシャン市場に参入しながらも、今まで経済的な理由などにより、頻繁に本格的なイタリアンやフレンチを食べる機会を持てなかった顧客層の支持を獲得することができ、ブルーオーシャン市場の創出に成功しています。
併せて、通常のマーケティング戦略も併用し、積極的な広報活動等を通じたブランド形成と、積極的な出店を行うチャネル政策により参入障壁を高めることにも成功しており、現在は他に有力な競合が見当たらない状況となっています。よって、「高級料理を格安価格で提供する外食サービス」は、他に類似サービスが殆ど存在しないため、今後も大きく成長するポテンシャルを秘めています。
「俺の株式会社」の成功事例は「ブルーオーシャン市場は、日本にはもはや存在しない。」と決めつけることが早計であり、自社の事業領域がレッドオーシャン市場であったとしても、その中のブルーオーシャン領域の開拓に挑戦することにより、眠っている潜在需要をいまだ掘り起こせる可能性があることを示したもの、と言えるでしょう。(川崎隆夫)
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