任天堂のDNA「ブルーオーシャン戦略」の行く末:忘れられた戦略(4/5 ページ)
任天堂の戦略は「ブルーオーシャンである」と言われていますが、ブルーオーシャンはすっかり下火に。その背景を明らかにするとともに、日本企業が今後、任天堂と同じ戦略を展開した場合、実効性が上がるものなのかどうか、その可能性を探ります。
ブルーオーシャン戦略に関するいくつかの誤解
しかしながらブルーオーシャン戦略は、日本では単なる「ブーム」として捉えられてしまい、現在ではすっかり忘れられた戦略論になりつつあります。それにはいくつかの理由があるようです。その代表的なものは、以下の通りです。
(1)ブルーオーシャン市場の開拓を狙って新コンセプトの製品を開発し、市場に投入したとしても、消費者に理解されるのに時間がかかる。また成功するとすぐに競合他社が追随し、市場がレッドオーシャン化するスピードが早いため、先行者メリットを十分に享受することができない。
(2)ブルーオーシャン戦略が提示しているツールやフレームを活用して、革新的な製品を開発できるなどありえない。革新的な製品の開発は、そんなに生易しいものではない。
以上のような指摘は、的外れなものではありません。しかし企業戦略は、ひとつの戦略を採用するだけで、全て事足りるわけではありません。それぞれの商品やサービスを取り巻く環境や市場特性に併せて、さまざまな戦略を複合的に組み合わせながら、企業全体で競争優位性を形成していくことが肝要となります。
よって、「ブルーオーシャン戦略」もひとつの戦略オプションに過ぎず、他の戦略と併用することで、初めて実効性が上がる性質のものなのです。
また、ブルーオーシャン戦略のツールやフレームの活用によって、革新的な新製品などの開発がすぐにできるようになる、などということは、もちろんありません。
また新商品の開発等の作業は、レッドオーシャン市場における商品開発などの場合と同じく、労力がかかるものであることにも変わりはありませんが、一方でブルーオーシャン戦略のツールやフレームを活用することにより、新たな価値を提供できる新商品や新サービスの開発がより迅速に、かつ効率的に行える可能性は高くなった、ということは間違いなさそうです。
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