地方交通救済の最終手段は「15歳から運転免許」かもしれない:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/3 ページ)
過疎地域における鉄道の存在理由に「通院と通学」が挙げられる。鉄道はバスと違って定時性があり、同時に多くの人を運べる。しかし視点を変えると、この問題を解消すれば鉄道もバスも不要となる。選挙権取得年齢も下がることだし、次は運転免許年齢を下げたらどうだろう。
少年運転者が社会問題を解決するかも
ただし、20歳未満の少年運転者には「高齢者輸送活動」への参加を義務付ける。地域がお年寄りの移動支援組織を作り、通院や買い物、入浴施設への移動を助ける。支援組織はタクシー会社に運営委託し、無用な競合を避ける。これで、通学や通院という公共交通問題を解決できそうだ。この制度をきっかけに若い人が介護ビジネスを志してくれるかもしれない。
もちろん少年運転者の事故や珍走団の増加など懸念も多い。しかし、高齢者運転者の事故リスクよりも少年運転者の方が事故リスクは少ないのではないか。また、少年運転者が自分でクルマを運転してみれば、珍走団が一般ドライバーにとってもいかに迷惑な存在か分かるだろう。
自動車運転免許取得年齢引き下げのメリットはほかにもある。早くから自動車運転免許を得て、運転経験を積めば、若いうちに大型自動車免許を取れる。バスやトラックのドライバー不足や高齢化に対処できる。高校生でも手が届く価格の中古車が売れて地域経済が活性化する。クルマは卒業後の自立を促し、デートに使ってもらえば婚姻年齢も下がり、少子化に歯止めがかかる……あ、これは言い過ぎた。
米国では高校生もクルマを運転できる州がある。ハリウッド映画でも高校生がクルマを運転している場面がある。これは意外とおもしろい結果を出している。高校生がクルマに高性能パソコンを積んで友達の家に遊びに行き、LANで接続して対戦ゲームを楽しむ。この文化が広がって、大規模なLANパーティが開催され、やがてIT産業を巻き込んだ「eスポーツ」の文化が生まれた。欧米では対戦イベントがゲーム市場の一翼となっている。
だから真剣に公共交通を維持する未来を考えよう
日本では「地方鉄道やバス路線の廃止によって通学が不便になる。だから公共交通を維持せよ」という意見が圧倒的に多い。しかし、視点を変えれば、公共交通を私有交通に変えてしまうことでも地域活性化のメリットはありそうだ。
しかし、鉄道を愛する私としては、こんな施策が実施されたら困る。地方鉄道は絶滅してしまう。公共交通を維持したい人は、こんな未来が訪れないように、公共交通を生かす地域作りをしなくてはいけない。だからやるなよ、運転免許取得年齢の引き下げなんてやめろよ。絶対にやめろ。おい、押すな押すな(ダチョウ倶楽部風に)。
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