「書きたいことを書く」仕事――ノンフィクション作家・川内有緒さんインタビュー(前編):好きなことを仕事に(3/3 ページ)
国連を退職して5年。「書くことで生きていく」道を選んだ川内さんはいま、そのときの決断を振り返って何を感じているのか――。夢に一歩踏み出した川内有緒さんに聞いた。
好きなところに行って、好きなことを書く
――それにしても、国際関係のリサーチのお仕事からフリーのライターに、というと職種的にも大きな飛躍があるように感じますが……。
そもそも国連を辞めたとき、「ライターという職業になりたい」っていう気持ちだったわけじゃないんですよね。まだ「ライターとして食べていく」というほどのはっきりとした決意というのはなくて、とにかく私が見聞きしたこと、出会った面白い人、それを自分なりに文章にできればいいという感じでした。
文章を書く仕事だけじゃ全然お金にならないから、もともとの専門である国際関係のリサーチの仕事も引き受けていましたし。そうしながら、自分が好きなところに行って、好きなことを書ければいいかなっていう思いだったんです。
それも、国際協力分野のコンサル会社や国連みたいな、いろんな国に旅出る、いろんな国の人と働くのが普通だという環境の中にいたからこそ「今やっていることを文章にできればな」という気持ちが生まれてきたので、過去の経験が生きてる部分はいっぱいありますね。
だから、「ライターです」と名乗ると誤解を招くかなという気もしています。
私は川内さんを少し誤解していた。とにかく「書く」仕事に就くために、組織を辞めたのだと想像していたのだが、実際は「面白いことを」文章という形にしたい――それを生業(なりわい)に、というよりは、それができる環境がほしいという気持ちから始まったという。
ここに、川内さんならではの「好きなことを仕事に」のヒントがあるような気がする。
とはいえ、フリーランスは必ずしもお金の面で安定しているとは言い難い。後編では、そんな「生活」の部分、そして現在の仕事に迫りたい。(Yukimi Hiroyasu)
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