“変わるはずのないモノ”に脚光を浴びさせたバルミューダが提示したこと:扇風機とトースター(1/3 ページ)
2015年6月に発売が開始された「バルミューダ・ザ・トースター」が快進撃を飛ばしている。販売価格は税込で約2万5000円なのに、消費者からの「欲しい」という声は高まるばかり。その理由を探ってみると……。
神原サリー(かみはら・さりー)
神原サリー事務所代表取締役。青山学院女子短期大学英文科を卒業後、福武書店(現:ベネッセコーポレーション)、サンケイリビング新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。
バルミューダといえば、2003年に東京でバルミューダデザインを設立したベンチャー企業。2010年に初代の扇風機「GreenFan」を発売後は、空気清浄機「エアエンジン」、加湿器「Rain」、暖房機「スマートヒーター」などの空調家電で知られる。そんなバルミューダがどうしてキッチン家電に参入したのか。
同社の代表の寺尾玄氏は、常々「機能や性能よりも、気持ちよさや心地よさなど、数値で測ることのできないものが大切。“いい体験”をしてもらいための裏付けとして、素晴らしい機能がある」ということを言い続けている。食べるというのは五感をフル活用すること、だからこれまで以上に“いい体験”を届けられるに違いないというのが、調理家電へと向かわせたきっかけだという。
今回の「バルミューダ・ザ・トースター」は、毎朝食べるパンがもっとおいしくなるためのトースターという着想で作られている。トーストしても耳までおいしい食パンや、オーブンから取り出したばかりの焼き立てのクロワッサンやバターロールが再現できるトースターがあったなら、きっといい1日が始まるはずだと。
そのための熱意は並ではなかった。1年以上の開発期間を経て、小さじ1杯の水による須スチームと、パンの種類によって制御を変えた完璧な温度コントロールによって、究極のトーストや焼き立てパンの再現を可能にしたのだ。
専用ヒーターによって温められたスチームが庫内に充満し、パンの表面は水の薄い膜で覆われる。その後、パンの表面だけが軽く焼けて、水分を閉じ込める。パンのための4つのモードでは、パンの種類によって、やわらかさと風味を蘇させる60度、きつね色に色づき始める160度、焦げ始める220度という3つの温度帯を絶妙にコントロールして仕上げる。
誰もが一度食べれば納得する焼き上がり。これまでの平均売価の10倍という高価格であってもパン好きにとって“欲しくてならない”と思わせる魅力がこのトースターにはあるのだ。
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