“変わるはずのないモノ”に脚光を浴びさせたバルミューダが提示したこと:扇風機とトースター(2/3 ページ)
2015年6月に発売が開始された「バルミューダ・ザ・トースター」が快進撃を飛ばしている。販売価格は税込で約2万5000円なのに、消費者からの「欲しい」という声は高まるばかり。その理由を探ってみると……。
“高級扇風機”市場を作ったバルミューダ
ここで思い出されるのが、バルミューダの飛躍のきっかけとなった扇風機のことだ。
100年以上も前から私たちの生活になじみ、一家に1台はあったはずの扇風機も平成以降は「エアコンがあるからいらない」という声まで聞かれるようになり、扇風機はホームセンターや家電量販店の片隅に安価で売られているものというイメージが定着していった。
そうした中で、バルミューダの代表・寺尾玄氏は、「エアコンの冷気が嫌いな人もいる。自然界にある風のように、心地よい風を届ける扇風機を作りたい」という信念のもと、不快さを感じさせない当たり続けられる風を実現させた扇風機を生み出したのだ。
渦を巻いて不快に感じさせる一般の扇風機の風と異なり、2重構造のファンによって風を1点に集中させ、空気のかたまりと渦を消滅させてから拡散させる“面の風”を編み出し、DCモーターによって羽根の回転数を自在に調節させ、静穏性も高めた。ただし、その価格は3万5000円という高価格に。それでも、シンプルで美しいそのデザインも含め、体感して分かる心地よさから確実にファンを増やしていった。
その前年秋にダイソンから羽根のない扇風機が発表されたことや、2011年春に起きた震災による節電意識の高まりの中で扇風機が見直されたこともあり、わずか2000円〜3000円程度だった従来の価格からは10倍以上という“高級扇風機”という市場が確立されていったのだ。
扇風機もトースターも、すでに長い間この世の中に存在し、その立ち位置を確立されていたものだ。羽根を回して風が来ればいい、あとは強弱とタイマー機能……その程度だった扇風機に着目。「風の質」という新たな概念を呼び起こし、脚光を浴びさせたあのストーリーが、今回のトースターでも見事に再現されている。
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