“変わるはずのないモノ”に脚光を浴びさせたバルミューダが提示したこと:扇風機とトースター(3/3 ページ)
2015年6月に発売が開始された「バルミューダ・ザ・トースター」が快進撃を飛ばしている。販売価格は税込で約2万5000円なのに、消費者からの「欲しい」という声は高まるばかり。その理由を探ってみると……。
数々のエピソードが共感を呼ぶ
もう変わることのないと思われていたものに再び着目をし、揺るぎない信念で開発に情熱を捧げ、付加価値をつけて“高級扇風機”“高級トースター”という新ジャンルを作り上げたバルミューダ。今までにないものをゼロから創造しなくても、当たり前のものを見直すという手法は、家電に限らずともものづくりに生かせるのではないだろうか。
未知なるものでないだけに、そこに新しい価値が付加されたときのインパクトは大きく、生活者のワクワク感は否応にも高まる。
最後に、バルミューダがこれまで記者発表会などで提示してきた数々のエピソードや流通へのチャレンジにも触れておきたい。
1つは、2014年4月に同社の扇風機の5代目モデルとなる「GreenFan Japan」の発表会時に代表の寺尾氏が行なったファイナル宣言だ。日本の家電製品は半年から1年でモデルチェンジをするのが普通だが、代表の寺尾氏は「扇風機のことを誰よりもよく考え、分かっている私自身が本当にいい扇風機だと自信を持っていえる扇風機だから、『GreenFan Japan』はいい扇風機のスタンダード。だから、モデルチェンジせずに同じ価格で5年、10年売っていきたい」と言い切ったのだ。発表会での熱い思いがこもったプレゼンに、最初は静まり返り、やがてざわつき、その後会場が拍手で包まれたことが記憶に残っている。
今回のトースターでは、おいしいパンの感動の原点は寺尾氏が17歳のときに放浪の旅に出た際に、スペインのロンダの町外れで食べた1個のパンだったこと、トースターにスチーム機能を持たせた理由は、社員の親睦を深めようと企画されたバーベキュー大会の日に雨に降られ、それでも決行したバーベキュー時に焼いた食パンのおいしさに気づいたから……などの数々のエピソードが披露された。
単なる開発ストーリーとも異なる、聴く人を魅了するエピソード。自分の何かとシンクロし、共感を呼び、心を満たす力。ユニークで真摯なものづくりに加え、それを伝えるコミュニケーション力の高さも顧客獲得の大きな要因に違いない。(神原サリー)
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