「しまむら」が「ナチスのマーク付き商品」を売ってしまった理由:スピン経済の歩き方(4/4 ページ)
衣料品大手「しまむら」の一部店舗で、ナチスドイツのハーケンクロイツをあしらった商品が売られていたので、ちょっとした騒ぎになっている。スペインのアパレルブランド「ZARA」でも同じような問題があったのに、なぜ「しまむら」でも……。
上場企業としてイマイチな対応
こうした一連の流れを見る限り、「しまむら」が本気でこのような問題に取り組もうとしているとは到底思えない。むしろ、ファッション業界から漏れ伝わってくる「デザインのパクリなんてみんなやってるじゃん。バレなきゃいいっしょ」という開き直りのようなものすら感じてしまう。
「会社というよりバイヤー個人の判断ミスだろ」と反論をする方もいるかもしれないが、個人的にはその可能性は低いのではないかと思っている。
「しまむら」は「ユニクロ」や「ワールド」と比較すると、販売費および一般管理費が圧倒的に少ない。このローコストオペレーションを実現させたのが、ページ総数は1000ページをゆうに超える分厚い業務マニュアルだといわれる。自社Webサイトでも、『最も優れたベテラン社員のやり方をマニュアルと考え、新入社員でも一定レベルの業務ができるようにするため、全ての部署でこれを重視し、標準化と合理性を追求』していると胸を張っている。
自他とも認める業務のマニュアル化に成功した企業で、「寺マークにも見えなくもないしギリセーフでしょ」なんて個人のフィーリングが優先されるとは思えない。だとすれば、今回ナチスのデザインを採用してしまった理由はひとつしかないのではないか。
デザインに対する明確な社内基準や、そのトラブルを想定した対応方法がマニュアルに含まれていなかったのだ。
「しまむら」のマニュアルは全社員から毎年5万件以上の改善提案が寄せられるそうで、3年もすればすっかり中身は変わるらしい。ならば、2009年に「再発防止」を誓った「パクリ問題」もマニュアルに反映されているはずだが、2013年に同様のことが起きている。もしマニュアルにデザインの社内基準や対応がしっかりと明記されていたとしても、それがどこまで機能をしているのかは正直、疑わしい。
「立派なマニュアルがあるにしては……」と首をかしげるようなところもある。今回の騒動を取材する『朝日新聞』に対して、「しまむら」本社企画室はこんな風に回答をした。
「今後の取り扱いは検討している。商品として扱うデザインの社内基準はあるが、今回の件に関してのコメントは差し控えたい」
「ZARA」は発売中止後、全ての文化と宗教に最大限の敬意をもっているなんてメッセージを出して悪意がないことを懸命にアピールした。それと比較すると、なんとも味気ないというか、他人事感が漂うというか。
マニュアル見直しのおりには、ぜひ広報の改善も検討していただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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