なぜ“バターみたいなマーガリン”が増えているのか:窪田順生の時事日想(1/5 ページ)
夏の猛暑が原因で、昨年スーパーの棚からバターが消えた。ここにきてようやく商品が並ぶようになったが、最近は“バター風マーガリン”が売れているという。少し前まではマーガリンがバターをうたう商品は少なかったのに、なぜ急に増えてきたのか。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
昨年、品薄になったバターがようやくちょこちょこと市場に出回り始めた。スーパーの棚に並ぶやすぐに売り切れて、「お一人様1個でお願いします」という張り紙もされている。
農林水産省は「猛暑や離農で乳牛が減って、牛乳優先でやっているもんで……」なんて釈明をしているが、こうも見事にバターだけが市場から消えたのは、関税割当制度に基づく「統制経済」の舵(かじ)取りを誤ったという“人災”の側面もある。
ご存じの方もいると思うが、国産バターは海外バターに比べてバカ高く、内外価格差は5倍程度とも言われている。このような状況で、輸入を安易に認めたら酪農家もメーカーもバタバタと倒れていく。そこで輸入バターは一定量までは国内価格に見合う関税をかけておいて、国産バターの座を脅かしそうになるや高い関税を締め出すという手法をとってきた。こういう「統制経済」の難点はスピードにある。今回のように酪農家やメーカーがギブアップしてから、慌てて輸入量を増やしても、どうしてもタイムラグが出てしまうのだ。
こういうバターの宿痾(しゅくあ)みたいな“品薄状態”が続くなかで、むくむくと存在感が増してきているのが、「バター風マーガリン」である。
市場に並ぶマーガリンのなかでやたらと「バター」をうたう商品が増えてきているのだ。中でも、J-オイルミルズの「ラーマ バターの風味」にいたってはパッケージの文字が「マーガリン」よりも「バター」のほうが大きい。
実際に、バター風味のマーガリンがよく売れている。日刊工業新聞によれば、「ネオソフト ファットスプレッド」(雪印メグミルク)は関連商品も合わせるとすべての合計売上高が昨年末の時点で前年同期比10%増。これは昨年9月に発売された「ネオソフト コクのあるバター風味」がかなり押し上げている。
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