安保反対デモは「12万人」……なぜ警察発表の「4倍」なのか:スピン経済の歩き方(4/4 ページ)
安全保障関連法案に反対する大規模な集会が行われた。主催者は参加人数が約12万人と発表したが、警視庁は約3万人。なぜこんなにギャップがあるかというと……。
安倍首相をひきずり降ろすために
ただ、共産党や労組のみなさんをかばうわけではないが、このような「水増し」は悪意があって行われるわけではない。大義のために数字をちょこちょこいじるというのは、共産主義や社会主義のお家芸というか、さして珍しい話ではないのだ。
南京事件なんか分かりやすい。事件当時や終戦直後は欧米メディアも中国も犠牲者を2万とか4万とか言っていた。しかし、広島や長崎の原爆の被ばく者数が年を追うごとに増えていくのを見るや、張り合うように20万人、30万人と跳ねあがっていった。「日本の戦争犯罪を糾弾する」という大義のために数字を盛るのは、「正義」なのだ。
今回、国会前に集っているみなさんからも、「安倍首相をひきずり降ろす」という清く正しい目標を遂行するためにはなにをやっても問題なしというムードが漂う。その正当性をアピールするために参加者数を「鬼盛り」したのでは、という疑惑がもちあがるのは当然だ。
いずれにせよ、主催者発表と警察発表に「4倍」の開きがあるというのは、健全な社会とは言い難い。もし国会前に集まった12万人の市民の数を、警視庁に圧力をかけて4分の1にして発表をさせたとしたら、安倍政権は1990年代の韓国並の情報統制をしているということだ。
逆に実数3万人の集会を12万人に水増しをしたとしたら、かつての共産党・統一労組懇系を思わせる「革命闘争」が国会前で行われているということである。
どちらの発表が事実なのかは今となっては分からない。ただひとつ言えることは、どちらであっても日本の未来は暗いということだ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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