コラム
ブランディングの後進国であることを示した「東京五輪エンブレム問題」(4/4 ページ)
東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、佐野研二郎氏がデザインした五輪の公式エンブレムの使用を中止し、新たなデザインを再公募すると発表しました。しかしそれだけで、今回の「東京五輪エンブレム問題」は解決したといえるのでしょうか?
組織委員会、審査委員会にブランディングの専門家を
以上のように、筆者は「エンブレムの再公募」については、単にエンブレムのデザインを再募集するのではなく、CIの見地から、前述の【CIの実施プロセス(例)】の中に記載されている「1〜5の作業」をしっかりと行った後に、デザインの公募を行うべきであると考えています。そのためには、組織委員会の中にCIや企業ブランディングに関する実務経験豊富な人材を投入し、ゼロからCIの作業を実践していく必要があります。
また審査委員会についても、現在はデザイナーばかりで構成していますが、今後はデザイナー以外にブランドマネジメントの専門家や企業経営者など、ブランディングの実務に精通している人材を加える必要があるでしょう。
今回のエンブレム問題は、「ブランディング」に関する実務領域において、日本が後進国であることを世界に示した事例であるといわれても仕方がありません。よって再発防止のためには、組織委員会、審査委員会ともにブランディングの実務経験者をメンバーに加えることが必須であり、併せて標準的なCIの実務プロセスに沿った作業を、しっかりと実践していく必要があると思います。(川崎隆夫)
関連記事
- 新国立競技場計画の破たんと“ごまかし”
東京五輪・パラリンピックのメイン競技場となる新国立競技場の建設計画。抑制されたはずの建設コスト見積もりにも、建設完了後の収支計画の説明にも、明らかなごまかしがある。 - 日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません
「訪日客が1300万人を突破」といったニュースを目にすると、「日本は観光立国になったなあ」と思われる人もいるだろうが、本当にそうなのか。文化財を修繕する小西美術工藝社のアトキンソン社長は「日本は『観光後進国』だ」と指摘する。その意味とは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.