新国立競技場計画の破たんと“ごまかし”:社会インフラを考える(1/5 ページ)
東京五輪・パラリンピックのメイン競技場となる新国立競技場の建設計画。抑制されたはずの建設コスト見積もりにも、建設完了後の収支計画の説明にも、明らかなごまかしがある。
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
東京五輪・パラリンピックのメイン競技場となる新国立競技場の建設計画。抑制されたはずの建設コスト見積もりにも、建設完了後の収支計画の説明にも、明らかなごまかしがある。
2520億円に膨れ上がった総工費に対し財源確保の見通しはいまだに立っていない。1000兆円という空前絶後の負債を抱える国家でありながら、財政再建に取り組むどころか、不必要な巨額赤字をなお積み上げようとするのは世界中のもの笑い以外の何物でもない。
しかし見直しを求める世論を無視するように、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)有識者会議が建設計画を了承したことに、各方面から批判が渦巻いている。
主な批判の論点は当初予算の倍近い金額に膨れ上がったこと。確かに当初の想定が大甘だったことは間違いない。
審議委員だった安藤忠雄氏は「コンペの条件としての予算は1300億円であり、応募者も認識しています」とコメントしており、当時の審議委員の1人であった建築家は「委員にはコスト見積もりを精査するようには求められなかった」とインタビューで述べていた。
つまり、建設コストの根拠がいい加減なままデザインを決め、基本設計や実施計画を詰めてみたら倍に膨れ上がったということだ。プロセス自体に問題があるとしか言いようがない。
これはまさに東京五輪向け整備に関し、小生が従来から指摘してきた懸念が現実化している事態だ。
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