なぜUSJは沖縄でテーマパークを造るのか 裏にオトナの事情アリ:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
USJを運営する株式会社ユー・エス・ジェイが、沖縄にテーマパークを造る計画を公表した。「沖縄でもハリーポッターみたいなアトラクションが楽しめる」と思うかもしれないが、その手の施設が造られることはない。なぜなら……。
自然を大事にした観光開発
ユー・エス・ジェイが沖縄進出を表明したおよそ1カ月後、糸数さんは、基地前で座り込みを続けている翁長久美子名護市議なんかと視察のためハワイを訪れている。州知事とも面談をした後、こんな意気込みをおっしゃったとか。
「基地問題にしても根っこにあるのは自然を大事にすることであり、観光面など持続可能な受け入れを続けるハワイを視察してさまざまな面に生かしていきたい」
政府の人間が、どうにか翁長さんを籠絡しようと考えた時、このキーマンの言葉を使わない手はない。つまり、「自然を大事にした観光開発」を政府が全面的にパックアップしますんで、そっちも少しは妥協してくださいなという取引を行うのだ。
いやいや、確かに政府の狙いは分かるが、ユー・エス・ジェイにはなんの得もないだろと思うかもしれないが、実は彼らにとってもこれは悪い話ではない。グレン・ガンペル社長の出身である、米国のユニバーサル・スタジオ・インクもIR進出を模索しており、日本のユー・エス・ジェイもIRに関わりたい気マンマンだが、実績がない。安倍政権に大きな「貸し」をつくっておけば将来的にIRが解禁をした時にご相伴にあずかれるからだ。
そう考えていくと、海洋博にできる新しいテーマパークの姿もなんとなく見えてくる。もし仮にこの方向で開発が進むのなら、おそらく「水」がテーマになるのではないか。
糸数さんたちが手本にするハワイにも沖縄同様、USJのような遊園地的なテーマパークはない。ただ、唯一あるのが「ウェット・アンド・ワイルド・ハワイ」だ。東京ドーム約3個分の広さのなかにスライダーや流れるプールという15のアトラクションがある「ウォーターアドベンチャーパーク」である。この施設のコンセプト同様ならば、「南国の美しい自然を体感できる」といえなくもない。
さらにいえば、「美ら海水族館」との相性もいい。実際にシンガポールのユニバーサルスタジオがある巨大IR「リゾート・ワールド・セントーサ」でも、世界最大の水族館マリンライフパークやドルフィンアイランドの隣には、アドベンチャーコーヴというウォーターパークがある。ちなみに、沖縄にはこれまでこの類のウォーターパークはない。
もちろん現時点でのどのようなテーマパークが造られるのかは分からないが、経済波及効果が大きく沖縄の地元に恩恵をもたらす施設であって欲しいものだ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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