なぜGEは“システム思考”を全社に浸透できたのか?:有識者対談(2/3 ページ)
あらゆる企業から経営のお手本とされる米GE。同社が今なお輝きを放ち続ける理由はさまざまだが、その一因として「システム思考」の実践が挙げられるという。具体的にどういうことなのだろうか……?
ありのままを見る
――システム思考を身に付け、すぐに仕事に生かすためにはどうすればいいでしょうか。
小田: システム思考というのは、自分の思い込みや過去の成功体験などにとらわれず、いかに現実をありのままに見るかということです。物事のつながりや動きを見ようとすると、しばらく立ち止まらなくてはなりません。例えば、海にはたくさんの生き物がいますが、その場でさっと見るだけでは全体は分かりません。潮が引けば新たな生き物が現れたりするわけですから。そのためにはスナップショットを止めて、立ち止まって考えることが必要です。
嶋田: 優れたビジネスリーダーの方たちと話していると、システム思考というものをどこまで意識しているかは別として、俯瞰的に物事を見る能力が高い方が多い気がします。そうした人は点でモノをみるのではなく、繋がりを意識していて、ビジネスにおいて何がボトルネックになっているか、悪循環を防ぐにはどうすればいいかなどを察知する能力が高いです。
ドネラ・H・メドウズ著、枝廣淳子翻訳、小田理一郎解説 「世界はシステムで動く――いま起きていることの本質をつかむ考え方」(英治出版)。システム思考の基本的な考え方と、その実践法については本書が参考になる
最近だとオーソドックスなロジカルシンキングはそれなりに浸透してきました。ただ、システム思考になると、それよりもさらに高いところから世の中をありのままに見て、繋がりを考える方法なので、まだまだ実践されている方は少数です。だからこそチャンスがあると思います。
小田: ただ立ち止まって見るのではなく、ダイナミックな動きをじっと観察することが大事です。システムというのはものすごく大きなものだととらえがちですが、ミクロな現実からマクロを見るということです。決して抽象的な方に行くのではなく、徹底的に具体的な現実を見ること。これは実は誰にでも始められます。
例えば、マーケティングの場合、セグメントを切って、平均的な像が出てきてといった分析レポートを見て考えるのではなく、その人が日常どう行動しているかを観察したり、スーパーマーケットで誰がこの商品を手に取るかと観察してみたりすることが大事です。
嶋田: システム思考というと身構えてしまう人がいるけれど、簡単なシステム構造は身の回りに転がっています。そこから練習を始めてみるというのも効果的かなと思います。世界の全構造を明らかにしようというのは難しいですが、職場のちょっとした課題、例えば、忙しく働いているわりには生産性が高くないなというのを、なぜだろうと考えるだけでもトレーニングになると思います。
その際、ひたすら自分の頭の中で考え、一人でうーんと唸っているのはあまり良いやり方ではありません。観察や対話、組織学習をうまく組み合わせていくとシステムをより理解できるはずです。
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