過去の汚名を背負いながら戦うファイター・秋山成勲という男:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/3 ページ)
総合格闘家の秋山成勲が、再びリングに立つ。桜庭和志戦の“ヌルヌル事件”をきっかけに、すっかり「ヒール」になってしまったが、秋山の経歴を追いながら人物像に迫ってみると波乱万丈な半生が見え隠れする。
日本と韓国の架け橋に
秋山は日本国籍を取得しているが、自ら常々公言しているようにルーツは在日韓国人四世。その“誇り”を胸に自らが日本と韓国の架け橋になろうと、日本でジムを経営しながら韓国でもタレント活動を行うなど両国間を飛び回る多忙な日々を過ごしている。第二の母国・韓国では複数の大手企業CMにも出演。いまや絶大な人気を誇り、押しも押されもせぬスーパースターとして、チュ・ソンフン(韓国名)の名は韓国国内において広く浸透している。
しかしその一方で日本において秋山は格闘家として数々の戦績を築いたはずの母国であるにも関わらず、ヒール扱いされる傾向が強い。2001年のアジア柔道選手権(ウランバードル)、2002年のアジア大会(釜山)の両大会で日本代表として男子柔道81キロ級金メダルを獲得。こうした輝かしい実績を引っ下げた秋山は2004年7月にプロ格闘家へ転向すると、2006年10月9日にはHERO'Sライトヘビー級王座を獲得し、たった2年でチャンピオンベルトを巻くなど急進化を遂げた「日本格闘界の怪物」として順調に階段を上がっていくかのように見えた。
しかし、その“怪物性”が別の意味で覚せいしてしまったのが、同ライト級王座獲得からわずか2カ月後の同年12月31日の大晦日決戦。京セラドーム大阪で行われた「K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!」(FEG主催)のメインイベントで組まれた桜庭和志との一戦だった。伝説の格闘家と言われたホイス・グレイシーに勝利するなど“グレイシー・ハンター”の異名を持った桜庭を秋山は序盤から圧倒し、最後はロープ際でマットを背にする相手に容赦なく猛烈なパウンドを浴びせ続けた。その数は100発強――。1ラウンド5分37秒、レフェリーがストップをかけ、ついに試合が止められた。
秋山のTKO勝利とアナウンスされたが、リング上の雰囲気は明らかにおかしかった。試合中も桜庭は「すっごい、滑るよ!」「タイム、タイム!」などとレフェリーに対し、何度も何度も絶叫。試合終了後も桜庭は納得せず、絶妙のタイミングでタックルに入っても異常なまでにヌルヌルと滑る秋山の身体によっていとも簡単にスルリとかわされてしまったことに「反則だろ!」とクレームをつけ続けていた。この当時リングサイドで取材を続けていたが、後味の悪さが残ったのは言うまでもない。
関連記事
- “ハンカチ王子”斎藤佑樹の人気はなぜ凋落したのか
かつて“ハンカチ王子”として脚光を浴びた日本ハム・斎藤佑樹投手の人気が凋落している。成績がパッとしないから仕方がない部分もあるが、なぜKYな言動を繰り返すのか。その裏にあるのは……。 - 年俸4億円を“持ち逃げ”……松坂大輔に生じる「説明責任」
ソフトバンク・松坂大輔投手が「残念な人」になってしまった。右肩関節の手術が終わると、日本を離れて「ハイ、サヨウナラ」。年俸をもらっている「プロ」なのだから、メディアを通じてファンに説明する責務があるのでは……!? - なぜ亀田3兄弟は毛嫌いされるのか
プロボクシングで活躍する亀田3兄弟へのブーイングが止まらない。世界王者に善戦し、僅差による判定負けでも非難されている。ギネス世界記録に認定された史上初の3兄弟世界王者なのに、なぜ毛嫌いされるようになったのか。その理由を探っていくと……。 - ご存じ? 今「新日本プロレス」が盛り上がっている
「プロレス? 昔は好きだったけどなあ」という人も多いのでは。日本のプロレス界は長きに渡って低迷を続けているが、実は1社だけ“ひとり勝ち”をしている団体がある。「新日本プロレス」だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.