「LGBTの問題」はたくさんあるのに、なぜ対応が進まないのか:水曜インタビュー劇場(LGBT公演)(2/6 ページ)
LGBTを取り巻く環境をみると、さまざまな問題がある。課題を解決しなければいけないのに、なぜ取り組みがなかなか進まないのか。LGBT問題に詳しいNPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀さんに話を聞いた。
LGBTを迫害する国や地域
村木: さすがにそうした治療は「非人道的だ」ということで、世界保健機構(WHO)は1990年に「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とはならない」と決めたんですよね。日本でも1994年に当時の厚生省がこの基準を採用しました。
土肥: 1994年って、村山内閣が発足した年ですね。それほど昔の話じゃない。
村木: 20世紀もさまざまなことが起きていました。例えば、ナチス・ドイツは、同性愛者を強制収容所に送っていて、数万〜数十万人を虐殺しました。英国では、同性愛者は公立学校の先生になれない法律がありました。米国では、軍隊で同性愛者だと知られたら除隊になる慣例がありました。
土肥: いずれもいまでは廃止されていますよね。
村木: はい。でも今でもLGBTを迫害する国や地域があります。例えば、ロシアではLGBTであること自体は罪にはなりませんが、LGBTについて人前でポジティブな発言をすれば罪になるんですよ。
迫害されているのは、ロシアのLGBTだけではありません。インド、シンガポール、マレーシアなど、78カ国と4地域ではLGBTというだけで「禁固刑」になります。サウジアラビア、イランなど、5カ国とナイジェリアおよびソマリアの一部では「死刑」です(2014年5月現在)。
土肥: 発言するだけで罪になったり、LGBTというだけで禁固刑になったり、死刑になったり……。ちなみに、日本では?
村木: 日本では、LGBTだからといって犯罪になることはありません。ただ、欧州などでは差別禁止法の整備が進んでいますが、日本にはありません。職場や学校で、イジメやからかいの対象になっていたり、公平でない扱いをされていますが、それを取り締まる法律がないのです。
関連記事
- 「どんな人がタイプ?」といった“恋バナ”ができなくなる(かも) 職場のLGBT問題
「彼氏いるの? どんな男性がタイプ?」――。日常的に交わされているこうした会話が、数年後NGになるかもしれない。その理由は……。 - なぜ“普通のオトコ”は、なかなか見つからないのか?
「彼女がほしいのに、なかなかできない」と悩んでいる男性も少なくないはず。会社の女性には声をかけにくいし、飲み会に参加してもなかなか結果がでない。そうした悩みに対し、恋愛マーケティングの専門家に話を聞いた。全3回でお送りする。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - 中国人女性とのデートで、「中華食べに行こうよ」がNGな理由
中国人PRウーマンが、「中国人と上手に付き合う」ためのノウハウを伝授する本連載。コミュニケーションの極意は相手を理解すること――というわけで第2回目は、中国の未来を担う若者たちの結婚事情などに迫る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.