「名将」の予感を漂わせる、ソフトバンク・工藤監督の“人心掌握術”:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
プロ野球の福岡ソフトバンクホークスがパ・リーグ連覇を成し遂げた。就任1年目の工藤公康監督は、どのような手法でチームを引っ張って来たのか。手腕と人間性に迫ってみた。
自分の主義主張を徹底
当時の阿部は真摯(しんし)にその言葉を受け止め、直立不動で聞き入っていた。この時点で既に誰もが認める経験豊富な超一流左腕だったとはいえ、当時38歳の左腕の存在は若い選手たちにとって人によってはまるで小姑みたいな口うるさいオッサンと受け取るムードがあったのも事実だ。そういう難しい雰囲気においても決してへりくだったり、迎合したりしようとはせず自分の主義主張を徹底させていた。
野球はチームスポーツであり、選手が個人主義に走ってしまっては絶対に試合では勝てない。そのためには自らが嫌われ役になってでも犠牲的精神が必要だ。工藤公康という男は、そうした考えを持つ人間であった。それは1992年の入団時から13年間在籍した西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)でチーム黄金期の主力投手として戦った時代に故根本陸夫氏(当時のチーム管理部長)や広岡達朗氏、森祇晶氏(ともに元西武監督)らから植え付けられた“教え”でもあった。
そんな頑固一徹な昭和のムードを漂わせるスタイルに心酔した1人が、同じYGユニホームを身にまとっていた当時チームのエース・上原浩治(現レッドソックス)である。試合のマウンドにおける立ち居振る舞い、そして日々の練習での調整法や考え方について共感を覚えて一挙一動に心酔。このころの春季キャンプのブルペンでは黙々と誰よりも球数を重ね、まるで精密機械のように正確無比な制球で投球練習を行う工藤流ピッチングにじっくりと見入る上原の姿は毎春の恒例行事となっていた。
最近、上原が日本のメディアに「自分が制球力を向上させることができたのは巨人時代に工藤さんの練習法を生で目に焼き付け、ピッチングに対する考え方を共有することができたから」と明かしたのは賭け値なしに心からの本音であろう。
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