“ザ・縦割り”だったJALが、変貌できた理由:水曜インタビュー劇場:(JAL公演)(1/7 ページ)
JALの業績が好調だ。景気が回復してきたり、訪日外国人が増えたり、原油が安くなったり、さまざまな外部要因があるが、記者は内部に注目した。破たん前の企業文化は縦割りだったのに、破たん後はかなり変化してきている。その理由は……。
JALが好調である。直近の決算(2015年4〜6月期)をみると純利益が前年同期比2.2倍の326億円。それだけではない。営業利益やら経常利益やらも同期では過去最高を記録している。
こんなことを書くと、「そりゃあ破たん処理のときに、じゃぶじゃぶとお金を注入したんだから当然でしょ」とか「外国人がたくさんやって来たから儲かっているんでしょ」とか「原油が安くなったから、そこそこ儲かるでしょ」といった意見が飛んできそうだ。すべて正解である。破たん前は超低空飛行だったのに、破たんしてから5年……いまでは超高空飛行が続いているのだ。
だからといって「よかった、よかった。これで優良企業の仲間入り」といった美談で話を終わらせてはいけない。月日が経過したことで、「あのときの自分たちはヒドかったなあ」「会社が存続したのは○○のおかげ」などと冷静に振り返ることができるはず。例えば、破たん後に、日本を代表する経営のプロ――京セラ創業者の稲盛和夫さんがやって来て、「JALフィロソフィ」なるモノをつくった。
全社員に手帳のようなモノが渡され、表紙には金の文字で「JALフィロソフィ」。ページをめくると「お客さま視点を貫く」「地味な努力を積み重ねる」「成功するまであきらめない」といった立派なことが書かれているのだ。なぜこんなモノをつくったかというと、稲盛さんが「集団をまとめて同じ方向を向かって進むには、全員の気持ちをひとつにすることができる共通の考え方がなくてはならい」と言われたそうで、それを実践するためにJALフィロソフィが策定された。
ということは、破たん前って、みんなバラバラの方向を見ていた? まさか優秀な人材がそろっている会社でそんなことはないでしょ、と念のために聞いたところ、同社・人財本部の野村直史部長は「グループ会社は60社ほどあったのですが、隣の会社がなにをやっているのか分からない状態でした。いや、同じ会社でも部署が違えば、なにをやっているのか分かりませんでした。興味がないというとか……『他人事』だったんですよね」とのこと。
ま、まさか……である。たくさんの会社があって、たくさんの部署があったのに、足並みをそろえず仕事をしていたようだ。当時の状況を詳しく聞かせていただけますか? と聞いたところ、快く「OK」の返事をいただいたので、まずはどんな「企業文化」だったのかを聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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