ソニー「若返り戦略」の不安と期待(1/4 ページ)
ソニーがハイレゾ対応のウォークマンの新モデルとヘッドホンの新シリーズを発表した。若者層を中心ターゲットとしたその戦略に筆者は不安と期待を持っている。それは……。
9月8日にソニーから配信されたニュースリリースによると、発売されるのは「Aシリーズ」というウォークマンと新シリーズのヘッドホン「h.ear(ヒア)」。リリースの中でも「これらの商品を通じて、臨場感あるハイレゾの音楽をファッショナブルに気軽に楽しむスタイルを、若い世代を含めたより多くの方々に向けて、ご提案してまいります」とある。その言葉通り、商品の特徴としてまず目に付くのは色である。ウォークマンとヘッドホンは同色でコーディネートでき、6色のバリエーションを揃えている。若年層の携帯音楽プレイヤーもファッションの一部として考えるという嗜好をとらえようということだろう。
ブランドの悩み、あるいは宿命
そもそも、なぜ、今回ソニーはターゲットに若年層を選んだのだろうか。そこには、ソニー、もしくはウォークマンというブランドに限らす、全てのブランドが背負う1つの宿命に抗うためだ。その宿命とは、何もしなければ人や生き物と同じく歳を取って老いていくということである。一世を風靡(ふうび)するほどのファンが付いたブランドほど、そのファンのロイヤルティーは高く、長くそのブランドを愛用する。しかし、その半面、それ以外の層からは「自分たちのブランドではない」とみなされがちになる。それ故、何らかの手段でブランドの若返りを図る必要が出てくるのである。
ウォークマンはかつて一世を風靡した音楽プレイヤーのトップブランドだったが、アップルの参戦によってその座を譲り渡すことになった。その後、アップルがiPhoneに注力し、音楽プレイヤーのiPodに力を注がなくなった結果、今日のシェアではソニーがトップに返り咲いている。しかし、携帯音楽プレイヤー市場全体(ソニーとアップルのシェアでほぼ占められている)を見れば生産台数は減少傾向が顕著といわれている。音楽を聴く手段がスマートフォンやiPhoneが主体となってきているからだ。そうなると、わざわざウォークマンを購入するのはソニーブランド、もしくはウォークマンブランドにこだわりのある中高年以上の層が中心となってブランドが老いることになってしまうのだ。
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