誰が、次のイーロン・マスクになれるのか(2/3 ページ)
世の中には、先天的にきわめて高い能力を持っている天才児がいる。そんな子どもが、物理学と経営学を学び、1週間100時間のハードワークをこなし、「人類を救う」強い意志を持っていたら、どうなるか。イーロン・マスクになる。
太陽エネルギーで地球を救う
イーロン・マスクが見ている世界は、宇宙だけではない。彼が救いたいのは、人類である。だから、当然、地上にも目を向ける。そこで起業したのがテスラ・モーターズ、電気自動車「ロードスター」を開発、販売する自動車メーカーである。
電気自動車といえば、日本のメーカーも開発している。有名なところでは日産のリーフ、三菱のi-MiEVだろう。けれども、ロードスターはこうしたクルマとは、完全に一線を画している。
走行距離は356km、0-100km/hの加速は4秒未満、最高速度は200km/hを超える。「電気自動車」から想像されるクルマではなく、スポーツカーだ。だから高価だった。けれども、爆発的に売れた。続いてセダンタイプ、SUVタイプを開発し、次には低価格版が登場する予定だ。
しかも、イーロン・マスクは電気自動車を走らせるためのインフラ整備にも取り組んでいる。全米に太陽光発電による充電スタンドを作り、テスラ・モーターズのクルマは無料で充電できるようにする。本気である。
見ている世界が違う
2014年、イーロン・マスクは突如、テスラの全特許をオープンソース化すると発表した。自社の強みの根源を、誰でも使って良いと差し出すのだ。一企業の競争戦略としては、ありえない話である。
けれども、これもイーロン・マスクにとっては、当たり前の話なのだ。なぜなら、彼のテーマは「人類を救う」ことであり、そのためには、みんながもっと電気自動車を作るようになり、みんながもっと電気自動車に乗ることが必要だから。
イーロン・マスクは、毒舌家として誤解されている面もある。つい最近も「うちをクビになった社員を、アップルがせっせと雇っている」などと公言して物議をかもした。だが、彼の発言は悪意によるものではないケースがほとんどだと、本書は指摘している。
彼の発言がときに常軌を逸したようにみえるのも「マスクは、自らに課せられた使命の緊急性を本当に理解しているのは自分だけだと思いつめることがある(同書、P289)」からだ。「世界と何とかしたいという切迫感。マスクが神経をすり減らしている原因がそこにある(同書、P298)」からだ。
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