なぜ三井不動産は、マンションの「ズレ」を放置したのか:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区のマンション。連日報道されている通り、「傾いている」ことが判明し、大きく注目されている。住民から「ずれている!」と指摘されていたのにもかかわらず、なぜ同社は10カ月以上も放置していたのか。それは……。
建設業界の構造的なシステムエラー
このように聞くと、住民たちの訴えを10カ月放置するという対応も納得ではないだろうか。さらに、この三井不動産社員は「欠陥ダメマンは決してなくならない」と断言し、その背景には「工期」以上に根深い問題がある、と指摘もしている。
結局、欠陥ダメマンリスクを十分認識しながら、「とりあえず竣工」させます。そして欠陥がでれば負担は施工した下請け業者負担となるのです。「施工した責任」を取らされるのです。このような事情なので突貫工事がなくなることはありません。(「第5章―4.デベロッパーが入居時期を遅らせることができない理由」より)
確かに、今回の「傾斜マンション問題」でも、旭化成建材は補修にかかる費用はすべて負担すると表明。世間の風当たりも三井不動産から「問題の社員」へシフトしているような印象だ。
旭化成建材が行った「偽装」は許されるものではない。が、そこで冷静に考えなくてはいけないのは、これは「個人犯罪」ではなく、日本の建設業界の構造的なシステムエラーではないのかということだ。
「欠陥住宅」という言葉が世間的に注目を集め始めたのは1980年代だが、それ以前から「手抜き工事」は山ほど確認されている。埼玉県狭山市では、欠陥団地の補修が13年間放置された。阪神大震災では木造建築だけではなく、マンションも多く倒壊しているが、その多くが手抜き工事だったということを、明治大学(当時)の建築学の先生だった中村幸安氏が『コウアン先生の人を殺さない住宅―阪神大震災「169勝1敗」の棟梁に学べ』という告発書で指摘している。
つまり、いつの時代も「欠陥」や「手抜き」が発覚し、そのたびに制度や審査を厳しくしてきたが、喉元過ぎればなんとやらでしばらくするとダイナミックな不正が見つかる。三井不動産社員が指摘するような、業界の構造的問題にまでメスが入っていないからだ。
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