なぜ三井不動産は、マンションの「ズレ」を放置したのか:スピン経済の歩き方(4/4 ページ)
三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区のマンション。連日報道されている通り、「傾いている」ことが判明し、大きく注目されている。住民から「ずれている!」と指摘されていたのにもかかわらず、なぜ同社は10カ月以上も放置していたのか。それは……。
「投げた先がロクでもない連中」で一件落着
デベロッパーがゼネコンに投げる、それをゼネコンがさらに下へ投げる。それでうまく回れば良し。なにか問題がでたら、「投げた先がロクでもない連中だったね」で一件落着。そんな構造はそろそろ限界に近づいてきているのではないか。
よく日本の「ものづくり」の現場では「職人不足」と言われる。職人が消えた、若者が職人を目指さない。ただ、これも冷静に考えると当然だ。力のある者が、力の小さき者へ「負担」と「責任」を押しつけていくような業界で、腕一本でたたかう個人が育つわけがない。
日本はこういう構造的問題を手をつけようとすると、「最近の日本人は」みたいなフワッとした精神論やスローガン的な言葉でお茶を濁(にご)すことが多い。「1億総活躍」なんてのはその代表だ。
今回の「傾斜マンション」問題でも、昔の日本企業は高いモラルがあったが今はダメだとか、劣化しているとかいう人がいるが、そういう精神論ではこれまで同様なにも問題は解決しない。
業界の多重請負構造や、竣工する前に完売させる販売方法など、「とりあえずチャッチャッと建てて売り飛ばしていく」というシステム自体を再考する時期にきているのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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