「産業構造が大きく変わる」 経産省が取り組むCPS推進戦略とは?(3/3 ページ)
経産省は10月23日、産官学の連携で「IoT推進ラボ」を設立した。同省の狙いとは何か。詳しい話を商務情報政策局・情報経済課長の佐野氏が語った。
日本は主役となれるのか
プロジェクトの対象分野はCPSの進展が顕著に進むと予想される製造、モビリティ、公共インフラ、医療、スマートハウス、行政、流通、農業、金融、観光などだ。経産省では、それぞれの分野で“実現すべき将来像”をまとめている。
例えば、モビリティでは、自律センサーに加えてデジタル地図を活用し、ドライバーが運転に全く関与しない完全自動走行を目指す。他車やITインフラからの情報も活用することで交通事故の減少、渋滞や環境負担の低減、高齢者の移動支援につなげる。
流通では、高度な需要予測に基づいたサプライチェーン全体でのリアルタイム在庫管理による全体最適化を実現させ、「規格品の大量生産・大量販売」から「個人の嗜好に合わせたものをリードタイムゼロで販売」への変革を目指す。
医療では、医療データを活用した予防医療、オーダーメイド医療を実現することで国民の健康増進と医療費の削減を目指すという。佐野氏は「CPSの進展によって産業構造、就業構造は大きく変わるだろう」と強調する。
「IoT、ビッグデータ、人工知能などが産業構造、就業構造、経済構造、経済社会システムにどのような変革をもたらすのか、それにどう対応していくべきかといった“具体的な変革の姿”と“具体的な処方箋”について、有識者を交え、これから具体的に議論していく」(佐野氏)
CPSの進展に欠かせない人工知能の研究についても力を入れていく。2015年5月に産業技術総合研究所で人工知能研究センターを立ち上げている。時を同じくして文部科学省は理化学研究所を拠点とした人工知能の研究に10年で1000億円を投じる方針を発表し、総務省も人工知能の研究に力を入れようと考えていたため、現在、3省で連携して人工知能研究のためのコンソーシアムを作ろうという動きになっているそうだ。
経産省はIoT推進ラボを通じて、世界に先駆けてCPSによる「データ駆動型社会」の実現を目指すという。新たな産業構造の転換期に日本は主役となれるのか。その戦いがいよいよ本格化する。
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