シャープの「ロボホン」は、普及するのか?:目のつけどころ(3/4 ページ)
シャープが久しぶりに「目のつけどころがシャープ」な商品を発表した。ロボット電話「ロボホン」だ。
ユーザーとなるのはどんな人?
普及のカギをにぎるのは5万人がどういう人なのかが問題だ。「普及論」のE・M・ロジャースのいう、イノベーターだけだとコラムにある「コアなロボットファンだけでは1万台がせいぜい」ということになるのだろう。加えて、ロジャースはイノベーターを「冒険者」とも呼び、新しいモノにすぐ飛びつきはするが、その行動原理は専ら自らの探求心を充足させるために向いており、他者との関わりはあまり意識していない。
つまり、伝播しないのである。ロジャースが指摘する次に市場で動く層は、アーリーアダプターだ。彼らは「目利き」であり、新しいモノの価値を吟味し、徹底評価して採用する。その上で、未採用者に伝達するという行動もとる。そのため、ロジャースは「尊敬される人々」という呼び方もしている。尊敬するのは、新しいモノに比較的早く興味を持つ一般大衆であるアーリーマジョリティー(初期大衆)である。
アーリーマジョリティーは、目利きであるアーリーアダプターの採用によって、「ああいう、分かっている人が買ったなら安心だ」と採用を決める。ゆえに、アーリーアダプターの採用により一般大衆に伝播するため、導入期から成長期に入って市場が一気に拡大するのだ。ロボホンにおいては、アーリーアダプター(目利き)からアーリーマジョリティー(初期大衆)に伝播する閾値が5万台なのだと解釈できる。
5万台売れるには?
イノベーターの採用とアーリーアダプターが採用するか否かを分けるものは何だろうか。それには、フィリップ・コトラーの製品特性分析とプロダクトライフサイクルを組み合わせたフレームワークで解釈できる。
製品普及の初期段階(導入期)では、製品を手に入れることで実現する「中核価値」=その製品を手に入れることによって実現する中核的な便益だけで購入される。つまり、ロボホンで考えれば、「よくできたパーソナルロボット」であり、「携帯機能付き」という物理的価値そのものだ。イノベーターたちは、そのロボットの動きや、連動するケータイの機能だけで十分楽しみを見出して購入する。それが成長期になると、中核価値を実現するめに欠かせない、かつ、どのように実現できるかが分かる「実体価値」が示されることが求められるつまり、「自分にとってどう使えるか・どんな価値をもたらすか」だ。
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