キャセイパシフィック航空が70機目のボーイング777を受領:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
キャセイパシフィック航空は2015年9月、70機目となるボーイング777を受領した。同社の国際線ネットワークの拡充と、その戦略における777の位置付けを考察する。
大人気の“進化型ヘリンボーン”
エアライン各社のビジネスクラスはどこも進化し、大型機ではここ数年、2本の通路をはさんで横1列が「1-2-1」という贅沢な座席配置も登場した。1-2-1とはつまり、全席が通路側。どの席からもダイレクトに通路に出られるので、トイレなどに立つ際も隣の乗客を気遣う必要がない。
各列4席配置だと当然、設置できるシート数は減ってしまう。そこで各社は、必要なシート数を確保するため、設計に独自の工夫を取り入れた。その一つが「ヘリンボーン型」というタイプ。進行方向に対してシートを斜めに、つまり通路側に乗客の足が向くよう配置することで、設置する席数を増やしている。キャビン全体を上から見ると魚の骨(ヘリンボーン)のように見えることから、この名で呼ばれるようになった。
当初は「画期的なレイアウト」だと評判を呼んだが、乗客の中にはこのヘリンボーン型に対して不満を口にする人が出始めた。その不満の多くは、他の乗客と通路をはさんで斜めに向き合うような形になるため、とときどき顔が合ってしまうこと。またカップルでの利用者にとっては、真ん中の2席並びを指定しても斜めに背中合わせに座る形になり、会話がはずまない。
そこでキャセイパシフィック航空は、ヘリンボーン型をさらに進化させる取り組みに着手した。同じ1-2-1の斜め配置でも、窓側のシートは窓に向かって、中央の2席並びも通路を背中にする形にレイアウトを変えたのだ。これなら窓側席はますますプライベート感が高まり、カップルでの利用者には2人だけのスイート感あふれる空間を提供できる。
キャセイパシフィック航空が今回受領したボーイング777-300ERのビジネスクラスキャビンにも当然、この進化型ヘリンボーンシートが設置されていた。2回の食事を楽しみ、映画を何本か観て、眠くなればシートをフルフラットにして夢の中へ。プライベート空間でPCを広げ、じっくり仕事を進めることもできる。シアトルから香港までの14時間近いフライトだったが、疲れなどまったく残っていない。ビジネス旅客を中心に同社が多くの利用者から評価されている理由の一端を垣間見た気がした。
ちなみにキャセイパシフィック航空は、英Skytraxによる「ワールド・エアライン・アワード」において、最多受賞記録となる過去通算4回の「エアライン・オブ・ザ・イヤー」に輝いている。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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